そういえば、pseudostratified epitheliaでは、細胞が分裂するときに必ず核をapical表面に押し上げてから分裂するinterkinetic nuclear migration(IKNM)という現象が知られている。これは、pseudostratified epitheliaの細胞は密集状態になっていて、スペース的に上皮層内での有糸分裂が難しいからだ、と言われている。今回のSBF-SEMの画像でも時々分裂期の細胞がいて、確かにみんなapical表面で丸く膨らんでいる。で、下はどうなっているんだろうと思って辿ってみると、なんとそれらの細胞の体は大きな丸いところだけで基底膜側にはつながっていない。え、そうなんですね、知らなかった。ていうか、これって報告されているんだろうか?
Wing discでのIKNMといえば、Dr. MGのとこの2011年の論文(Curr Biol, 21:485-491)(以前にもココで紹介してた)があって、それには以下のような記述がある。
"While analyzing the localization of anti-PH3+ nuclei, we observed that mitotic cells possessed an intensely F-actin-rich basal process that formed in early prophase and was present throughout mitosis. We also observed long, thin basal extensions of apically rounded mitotic cells in single-cell clones labeled with GFP. These findings indicate that, during mitotic rounding, imaginal disc cells can maintain some connectivity with the basal side of the epithelium despite the dramatic apical translocation of both the nucleus and bulk cytoplasm."
ふむ。まぁ確かに、この論文のコンフォーカル画像を見るとアクチンケーブルが核の下にあって、これが核を上へ押し上げているんだろうけど、基底膜にまでコネクトしているようには見えない。いや、実は前からずーっと疑問に思ってたんよね。核分裂がapical表面で起こるのは分かるけど、こんな上下に細長く伸びている細胞がどうやって縦方向のcytokinesisをやりきるんだろうかと(imaginal discのような単層上皮では、細胞は必ず上皮シートの平行方向に分裂する)。なるほど、apical側で丸くなって分裂するわけね。まぁそりゃそうか。確かによく見てみると、丸くなった細胞の下側に尾を引くように小さな泡みたいなのがたくさん付いている。たぶんこれは、basal側から体を引っ込めていった時に剥がれ落ちた細胞の切れ端なんだろう。
まぁでもいずれにせよ、そんな感じでこのぬり絵は知らず知らずやっているうちにかなり勉強になるんですね。自分の実験モデルのことをよーく知っておくのはとても大切なことなわけで、これは学生達にとっても観察眼を養う本当に良いトレーニングになると見た。今後新しくきた学生には必ずやってもらおうかな。
こんにちは。つい自分の中でタイムリーな記事を見つけたので、ワクワクして読みました!Epiblastもpseudostratified epitheliumなので、IKNM、興味があって最近色々と論文を追っています。この論文を最近JCでプレゼンしました(10.1038/s41467-022-28590-4)。マウスのEpiblastだと、完全にBasalからは離れて、分裂後には綺麗に元の位置に戻っていくようです。この上下の力学的変化よって何か起こっているのではないかといろいろ妄想しているところです。それにしても電顕画像の観察は見る力というか見つけ出す力が要りそうですね。
返信削除ASPP2の論文ありがとう。なるほど面白いねぇ、epiblastでも一度basalから完全に離れるんだね。ASPP2がないとapicalからdelaminateしてしまうとは。。。high mechanical stressの影響を受けやすいのは納得ですね。
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