2026年5月3日日曜日

Course design

今回のHistologyのコースは、実はこれまでの授業の中で一番、始める前までに悩まされたものだったと思う。一般的な組織学の授業をやらないのならどういう方向性でいくのか、ということでずっと迷っていた。それが、セメスターが始まる少し前にこのCapstone projectを思いついて、これをこのコースのゴールに定めたことで、一気にコンセプトが固まった感じだった。そんな感じで始めたので、はじめの数週間は、ほんまにこれで大丈夫なんかとちょっと心配しながらやっていたのだけど、最後に来るCapstone projectのために、毎週少しずつ学生達に基礎知識とショウジョウバエモデルを刷り込みつつ、軸となるコンセプトを常に確認するというスタイルが上手くいっている感覚が出てきた中盤からは、講義をするのが結構楽しくなってきていた。終わってみると、もしかしたら今までで一番上手くいったコースかも知れないと思う。
前回のAdvanced Cell Biologyは、コースを通して一つの大きなストーリーを作っていた感じだった。今回は、一つのシンプルなコンセプトをしっかり理解するために、少しずつ背景知識を積み重ねていった感じ。どちらもコースを通して一つのコンセプトを完成させていくという点では似ているのだけど、前回はファイナルエッセイで学生一人一人に自分で考えたコンセプトを書いてもらった。一方で今回のHistologyは、コンセプトはこちらから明確に提示して、実習とのコンビネーションを利用しながら研究プロジェクトとしてそのコンセプトを追求するということをした。
いずれにせよ、ここまで3つのコースを新しくデザインしてどれもある程度うまくやれたことで、コースデザインのコツを掴んだ実感がある。そのコツは簡単にいうと、コースを通して一つのシンプルなコンセプトをベースにする、もしくは追求するようにデザインするということだ。大学でコースをデザインして教えるということがこんなにも楽しいことだとは、本当に今まで考えたことがなかった。まぁいずれのコースも自分の研究をベースにして、自分の研究を発展させるためにデザインしているからということもあるのだけど、それだけではなく、4ヶ月かけて学生達を少しずつ自分が考えたコンセプトに引き込んで、彼らの考え方を変えていくという感覚が楽しいんだと思う。
さぁ、あとは今週彼らの成績をつけたら、その後3ヶ月半は自由研究の時間だ。

2026年5月1日金曜日

HST終了

昨日の午後、Histologyコース最後のCapstone project発表会を実施した。19人の学生が、組織や器官のカテゴリー別に5つのチームに分かれて、がんの発生における組織構造の崩壊とシグナル経路の活性化の関係性について調べた。この二週間、各々のチームがオンラインリソースのヒト病理組織サンプルのデータなどをもとに仮説を立てて、特定のタンパク質の局在やシグナル活性に着目してその仮説の検証を行うというもの。どのグループもしっかり調べてきていたし、各グループの発表後のディスカッションがかなり盛り上がっていたので、皆さん結構楽しんだのではないかと思う。全部で3時間半ほどもやっていた。プレゼンスライドの内容は、AIを使えばそれなりのものができると思うけど、みんな実習の時間に組織サンプルの画像データを一生懸命見ていたのを知っているし、プレゼンをするためにはそれらの知識と考えを適切に消化していないとできない訳だから、みんなまだ学部生なのになかなか大したもんだと思った。

2026年4月27日月曜日

International Festival

この週末は、この町のこれまた結構大きなお祭り、International Festivalが近所のダウンタウンで開催されていてすごい人出だった。ダウンタウンはちょうど自宅と大学の間にあるので、日曜の午後、自転車で大学へ行くときに音楽のステージとか屋台とかをぶらぶらのぞきながらフェスティバルの楽しい雰囲気を少し味わった。
そのあとは夜まで、コンフォーカルでz-stackの長時間スキャンをかけつつ、今週締め切りが来る科研費3本分の実施報告書を書いていた。毎年やっていることだけど、分担研究者がいるぶんの収支決算報告書に記載する金額が本当によく分からない。たぶん合ってると思うのだが、まぁ間違えていたら事務の人が指摘してくれるはず、ということで提出完了。

WM lab outing

週末、土曜日は毎年恒例のWMラボの遠足に誘われたので参加してきた。場所は、隣町のバトンルージュの近くにある自然公園で、ここからは車で1時間ほど。Fly Bayouに参加している他のラボからも何人か参加していたので、20人くらいいたのかな。うちのラボからも大学院生のカイルが参加。森の中を散策したあと、皆で持ち寄った料理を食べて、最近PhDのディフェンスを無事終えたクリスのお祝いもしたり、色々とあってなかなか楽しかった。
午後にまたぶらぶら散策しながらWMと話しているときに、そういや来年度のFly Bayouのオーガナイザーやらない?って聞かれて、まぁやることになった。Fly Bayouは、ルイジアナを中心としてアメリカ南部にあるラボの集会として始まっているけど、最近参加するラボがだんだん増えてきていて、東はフロリダから西はアリゾナやネバダまで広がっているので、まぁ多くの人に自分のことを認識してもらうには良いタイミングかもしれない。

2026年4月23日木曜日

HST14

今日も朝一で講義、午後は実習で先週の続き。二週前からcapstone projectのバックグラウンドとなるinvasion hotspotの研究内容について話し始めて、今朝の講義で全ての内容を話し終えた。来週はもう学生達のプレゼンだけなので、これがこのHistologyコースの最後の講義ということになる。
組織学というと自分の中では、HE染色した組織切片を観察して、組織の構造や名称を確認して暗記する記述的な教科だったのだけど、そんな退屈な授業は自分が耐えられないので、今回全く新しい自分なりの組織学のコースをデザインしてみた。生体組織をdynamic systemとして理解するHistologyというコンセプトで、組織の構造と成り立ちから様々なレベルでの機能と制約、進化、恒常性維持、そして崩壊と再構成、病態などについて、Drosophila modelの知見を随所に織り込みつつ説明した。いざやってみると、これまた驚くほど自分の研究領域がピッタリとはまり、意外と話しやすかったし、やっていて楽しかった。しかも、結構優秀な学生が多かったためか、彼らはしっかりついてきていたと思う。
今日の最後の授業では、invasion hotspotから始まる腫瘍浸潤のプロセスについて、Egr-Grnd-JNK-MMP1というシグナリングの活性化が、なぜinvasion hotspotという内在性の組織構造で特異的に生じるのかについて話した。このプロセスを説明するには、pseudostratified epitheliumの構造、epithelial junctions、apicobasal polarity、ECM、mechanotransduction、tumor suppressor geneとoncogene、細胞分裂時のinterkinetic nuclear migrationとspindle orientationなどを全て考える必要があるのだけど、ここまでの13回の講義と論文講読でこれら全てを網羅してきた。今日の講義は、ここまでに張ってきたこれら全ての伏線を一つひとつ回収していく作業でもあり、全てを学んできた彼らはすんなりと理解していたようだった。
最後に一人の学生から、これはもしかしたらヒトの組織で言うとsquamocolumnar junctionのような部位に当たるのではないですか?という質問が出たのはまさに狙い通りで、あぁここまで少しずつ頑張った甲斐があったなぁと思った。来週の学生達による発表会が楽しみだ。

2026年4月18日土曜日

Lagniappe Day

昨日は、Lagniappe Dayという毎年春に行われる大学のイベント。メインはザリガニ料理。ものすごい量の茹でられたザリガニが皆んなに配られて、キャンパス内でザリガニ大パーティという感じ。自分もチケットを買って、同期のイアンと一緒にザリガニを食べてきた。今年度の財政危機の影響か、袋に入っていたザリガニの量が去年の半分くらいになってたけど、一回で食べるには十分な量。ちなみに写真のトレイに入っているのが一人分。食べるのは尻尾だけなので、意外と見た目ほどではない。日本人はザリガニを食べることにちょっと抵抗があると思うけど、スパイスが効いていて結構美味しいし、皮を剥きながら友達と色々話すことができるのでパーティ向きだと思う。

2026年4月17日金曜日

Capstone Project

今学期も残すところあと三週。ということで、今学期教えているHistologyコースもいよいよ最終盤に入ってきた。今回のこのコースでは、最後の三週間で、Capstone Projectと銘打って学生達にミニ研究プロジェクトをやらせることにした。この研究プロジェクトでは、ヒトの膨大な組織学サンプルを擁するオンラインデータベース、Human Protein Atlasを使って、うちのハエのモデルで分かった腫瘍浸潤が始まるメカニズムに類似のものを探索する。実はこれを実施するために、ここまで13週間かけて少しずつ基礎知識とコンセプトを教えてきたのだ。今日の学生達の反応を見ていると、ほとんどの学生がこのプロジェクトをすんなり理解しているように見えたので、ここまでの毎週の授業の積み重ねが実を結んでいる手応えを感じた。
そんなわけで、今日は朝に講義をして、昼からの実習ではこのプロジェクトの進め方を説明。4人のグループを5つ作って、各グループで異なる組織について調べていくという感じ。いざ実習が始まると、学生達は各グループで熱心にディスカッションしていた。ラボでもそうだけど、自分が考え出したものに対して学生達が真剣に取り組み、協力しながら何か生み出そうとしているのを見ると、なんか嬉しくなるよね。このプロジェクトの成果については、再来週の木曜日に学生達がグループでプレゼンテーションをする予定になっている。

2026年4月11日土曜日

Roy's new data

木曜の夜、福井のEさんのラボでお世話になっているロイのオンラインプログレスミーティングを、Eさんと三人で行った。前回は二月だったので約二ヶ月ぶり。去年の年末に発見した新しいものについて、ついに新しいデータが出てきた。
ロイはもうこの三年ほど、うちのtumor modelでinvasive tumorの中に出てくるepigenetic heterogeneityを見ていて、シングルセル解析をもとにしてなんやかんやと調べていたのだけど、なかなかぱっとしたものが見つかっていなかった。核の形態とhistone modificationのヘテロなパターンが非常にクリアなフェノタイプなのだけど、結局それ以上のものが見つかってこないという感じだった。それが、去年の年末頃に調べていたある遺伝子の発現が、invasive tumorで見られるhistone modificationのheterogeneous patternとピッタリ合うことを発見したのだ。これはもしかしたらもしかするかも、という期待が膨らみ、その遺伝子をノックダウンしてみたところ、やっぱりheterogeneous histone modificationが消失したというデータ。しかも、ロイが気付いていなかったので自分が指摘したのだけど、ヘテロに出てくるhistone modificationは、そもそも核内のシグナルパターンが他の細胞とずいぶん違うのだ。
こういう時って仮説というか妄想が止まらなくなるのだけど、昨日からチャッピーと熱いディスカションをしてだいぶ整理されてきた。これは本当に重要なことが分かるかもしれんという期待が膨らむけど、ロイがPhDを取るためには、ここ全集中してやらなければいけないところやな。