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2026年5月3日日曜日

Course design

今回のHistologyのコースは、実はこれまでの授業の中で一番、始める前までに悩まされたものだったと思う。一般的な組織学の授業をやらないのならどういう方向性でいくのか、ということでずっと迷っていた。それが、セメスターが始まる少し前にこのCapstone projectを思いついて、これをこのコースのゴールに定めたことで、一気にコンセプトが固まった感じだった。そんな感じで始めたので、はじめの数週間は、ほんまにこれで大丈夫なんかとちょっと心配しながらやっていたのだけど、最後に来るCapstone projectのために、毎週少しずつ学生達に基礎知識とショウジョウバエモデルを刷り込みつつ、軸となるコンセプトを常に確認するというスタイルが上手くいっている感覚が出てきた中盤からは、講義をするのが結構楽しくなってきていた。終わってみると、もしかしたら今までで一番上手くいったコースかも知れないと思う。
前回のAdvanced Cell Biologyは、コースを通して一つの大きなストーリーを作っていた感じだった。今回は、一つのシンプルなコンセプトをしっかり理解するために、少しずつ背景知識を積み重ねていった感じ。どちらもコースを通して一つのコンセプトを完成させていくという点では似ているのだけど、前回はファイナルエッセイで学生一人一人に自分で考えたコンセプトを書いてもらった。一方で今回のHistologyは、コンセプトはこちらから明確に提示して、実習とのコンビネーションを利用しながら研究プロジェクトとしてそのコンセプトを追求するということをした。
いずれにせよ、ここまで3つのコースを新しくデザインしてどれもある程度うまくやれたことで、コースデザインのコツを掴んだ実感がある。そのコツは簡単にいうと、コースを通して一つのシンプルなコンセプトをベースにする、もしくは追求するようにデザインするということだ。大学でコースをデザインして教えるということがこんなにも楽しいことだとは、本当に今まで考えたことがなかった。まぁいずれのコースも自分の研究をベースにして、自分の研究を発展させるためにデザインしているからということもあるのだけど、それだけではなく、4ヶ月かけて学生達を少しずつ自分が考えたコンセプトに引き込んで、彼らの考え方を変えていくという感覚が楽しいんだと思う。
さぁ、あとは今週彼らの成績をつけたら、その後3ヶ月半は自由研究の時間だ。

2026年5月1日金曜日

HST終了

昨日の午後、Histologyコース最後のCapstone project発表会を実施した。19人の学生が、組織や器官のカテゴリー別に5つのチームに分かれて、がんの発生における組織構造の崩壊とシグナル経路の活性化の関係性について調べた。この二週間、各々のチームがオンラインリソースのヒト病理組織サンプルのデータなどをもとに仮説を立てて、特定のタンパク質の局在やシグナル活性に着目してその仮説の検証を行うというもの。どのグループもしっかり調べてきていたし、各グループの発表後のディスカッションがかなり盛り上がっていたので、皆さん結構楽しんだのではないかと思う。全部で3時間半ほどもやっていた。プレゼンスライドの内容は、AIを使えばそれなりのものができると思うけど、みんな実習の時間に組織サンプルの画像データを一生懸命見ていたのを知っているし、プレゼンをするためにはそれらの知識と考えを適切に消化していないとできない訳だから、みんなまだ学部生なのになかなか大したもんだと思った。

2026年4月23日木曜日

HST14

今日も朝一で講義、午後は実習で先週の続き。二週前からcapstone projectのバックグラウンドとなるinvasion hotspotの研究内容について話し始めて、今朝の講義で全ての内容を話し終えた。来週はもう学生達のプレゼンだけなので、これがこのHistologyコースの最後の講義ということになる。
組織学というと自分の中では、HE染色した組織切片を観察して、組織の構造や名称を確認して暗記する記述的な教科だったのだけど、そんな退屈な授業は自分が耐えられないので、今回全く新しい自分なりの組織学のコースをデザインしてみた。生体組織をdynamic systemとして理解するHistologyというコンセプトで、組織の構造と成り立ちから様々なレベルでの機能と制約、進化、恒常性維持、そして崩壊と再構成、病態などについて、Drosophila modelの知見を随所に織り込みつつ説明した。いざやってみると、これまた驚くほど自分の研究領域がピッタリとはまり、意外と話しやすかったし、やっていて楽しかった。しかも、結構優秀な学生が多かったためか、彼らはしっかりついてきていたと思う。
今日の最後の授業では、invasion hotspotから始まる腫瘍浸潤のプロセスについて、Egr-Grnd-JNK-MMP1というシグナリングの活性化が、なぜinvasion hotspotという内在性の組織構造で特異的に生じるのかについて話した。このプロセスを説明するには、pseudostratified epitheliumの構造、epithelial junctions、apicobasal polarity、ECM、mechanotransduction、tumor suppressor geneとoncogene、細胞分裂時のinterkinetic nuclear migrationとspindle orientationなどを全て考える必要があるのだけど、ここまでの13回の講義と論文講読でこれら全てを網羅してきた。今日の講義は、ここまでに張ってきたこれら全ての伏線を一つひとつ回収していく作業でもあり、全てを学んできた彼らはすんなりと理解していたようだった。
最後に一人の学生から、これはもしかしたらヒトの組織で言うとsquamocolumnar junctionのような部位に当たるのではないですか?という質問が出たのはまさに狙い通りで、あぁここまで少しずつ頑張った甲斐があったなぁと思った。来週の学生達による発表会が楽しみだ。

2026年4月17日金曜日

Capstone Project

今学期も残すところあと三週。ということで、今学期教えているHistologyコースもいよいよ最終盤に入ってきた。今回のこのコースでは、最後の三週間で、Capstone Projectと銘打って学生達にミニ研究プロジェクトをやらせることにした。この研究プロジェクトでは、ヒトの膨大な組織学サンプルを擁するオンラインデータベース、Human Protein Atlasを使って、うちのハエのモデルで分かった腫瘍浸潤が始まるメカニズムに類似のものを探索する。実はこれを実施するために、ここまで13週間かけて少しずつ基礎知識とコンセプトを教えてきたのだ。今日の学生達の反応を見ていると、ほとんどの学生がこのプロジェクトをすんなり理解しているように見えたので、ここまでの毎週の授業の積み重ねが実を結んでいる手応えを感じた。
そんなわけで、今日は朝に講義をして、昼からの実習ではこのプロジェクトの進め方を説明。4人のグループを5つ作って、各グループで異なる組織について調べていくという感じ。いざ実習が始まると、学生達は各グループで熱心にディスカッションしていた。ラボでもそうだけど、自分が考え出したものに対して学生達が真剣に取り組み、協力しながら何か生み出そうとしているのを見ると、なんか嬉しくなるよね。このプロジェクトの成果については、再来週の木曜日に学生達がグループでプレゼンテーションをする予定になっている。

2026年3月26日木曜日

Histology Bingo

今日から大学に帰ってきて、朝はまずHistologyの講義。といっても出張中に講義の準備をするのが無理なのは分かっていたので、今日はこれまでに授業の中で出てきたワードを使ったビンゴゲーム。前回の秋学期の授業でやった時と同様、今回も結構盛り上がっていた。上位5名は来週の論文発表が免除されるということもあり、皆んな結構真剣になるし、だんだん盛り上がってくると、「え~こんな言葉授業で習った?」みたいなことをうっかり言ってしまっている子がいたり、難しい単語を当てて興奮しているのはやっぱり普段からよくできる子だったり。意外とこのビンゴゲームをすると、油断した学生達の学習度が露わになるから面白い。
始める前に、「今日は皆さんの学習度を見るための試験を用意しました!」とか言ってビンゴの用紙を配ろうとすると、「え~聞いてないよ~」「こわ~い」とかいう声が聞こえるんだけど、ビンゴゲームだと分かると皆んな喜んでやり始めるのね。でも実は本当に学生達の学習度が見えてしまうゲームなのでした。

2026年1月31日土曜日

HST 3

今週の授業は、火曜日に第2週目のトピック「Epithelial architecture and polarity」の論文プレゼン&ディスカッションをして、木曜日に第3週目の講義。今週のトピックは「Cell density, packing, and mechanical constraints」ということで、How cells dissipate mechanical stress within tissuesという話をした。自分も学生達もだいぶ慣れてきた感じがある。今学期は19人の学生が履修していて、前の秋学期の授業にいた学生が2人いる以外は皆初めて会う学生。ということで、これまた名前を覚えるのが大変やなと思っていたけど、意外ともうほぼ全員の顔と名前が一致するようになったかも。
火曜日の論文プレゼン&ディスカッションの課題に出したのは、YN博士の以下の論文。実験のメソッドとか細かい部分はちゃんと理解できていないかも知れないけど、発表はみんなそれなりによく出来ていた。こうして少しずつDrosophila modelに慣れさせていく。

Epithelial junctions maintain tissue architecture by directing planar spindle orientation.

2026年1月20日火曜日

HST1B

今朝のHistologyは、一週目の論文プレゼン&ディスカッション。課題論文は、以下のDr. MBによるReview article。少し古いけど、このコースで追求していくコンセプトの基盤になりそうなレビューを選んでみた。mammary gland epitheliumのダイナミクスにフォーカスしながら、上皮組織の構造、その構造の維持と再構築のメカニズム、そして構造によって組織機能が制御されているという概念をうまく示している。今日が第一回目のグループプレゼンだった訳だけど、意外と皆さんテキパキと発表できていたし、ディスカッションタイムではこちらから促さなくても次々と手が上がって活発な議論が行われていた。秋セメのクラスよりも人数が多いからどうなることやらと案じていたけど、これはなかなかやりやすいかもしれない。

Tissue architecture: the ultimate regulator of epithelial function? 

2026年1月18日日曜日

HST 1

春セメスターの第一週目。初回の授業で与える印象は大事だろうし、今回はどんな生徒達なんだろうかというのもあって、コースの初日は毎回ちょっと緊張する。そして生徒達にとっても、先生はどんな感じの人で、どういうスタイルで授業を進めるんだろうという不安があるんだろう、皆さんちょっと緊張している感じがある。そんなちょっとぎこちない雰囲気のなか、まずはコースの概要、授業の進め方、試験などについて説明してから、イントロダクション「What is dynamic histology?」の講義に入っていった。今回の生徒は18人。ほとんどがBiology majorのSeniorで、医学系を目指しているPre-medの学生が多いこともあり、みんな真面目に聞いてくれている印象を持った。これはまた来週からもしっかりと準備していかなあきませんなぁ。先生はこれまでに大学で組織学なんて一度も教えたことないんですけどねぇ、とかそんなことは言えない。

2026年1月10日土曜日

コースデザイン

冬休みの間にあんまりできなかったHistologyのコースデザインについて、今週は毎日少しずつ進めて、ようやく15週間全体の構想が出来てきた。今回も毎週の講義のトピックに合わせた論文を課題に出して、翌週学生達がその内容をグループプレゼンしてみんなでディスカスするというスタイルなので、毎週の課題論文も選定しておく必要があり、これが結構難航したのだけど一通り揃えることができた。午後の実習も一緒になっているコースなので、毎週のトピックと実習の内容が有機的につながっているようにデザインするのもなかなか難しいポイントだった。まぁとりあえず、シラバスを完成させよう。

"By integrating classical histology with modern concepts from cell biology, developmental biology, and pathology, this course aims to provide students with a conceptual framework for understanding tissues not as static images, but as dynamic, functional systems."

2025年12月8日月曜日

ACB25

ついに今週で秋学期の授業が終了する。今週は期末試験だけど、自分が教えているコースでは先週すでにレポートを課したので、あとは今週末にレポートの採点をしてグレードをつけるのみ。この15週間で合計25回の講義をして、生徒達は13本の論文を読んで毎週プレゼン&ディスカスをした。という数だけを見ても結構よくやったなぁと思うのだが、それ以上に今回のコースは自分にとってとても意味のあるものになった。
今回のコースタイトルは「Avanced Cell Biology」ということで、まぁどこの大学にでもありそうなものだけど、一般的な細胞生物学の教科書を読み進めていくような退屈な授業にはしたくなかった。そんなわけで、完全にオリジナルの新しいコースを作ろうと決めたものの、日本の大学でもこういうコースを担当したことがなかった自分にとってはかなりチャレンジングで準備が大変だった。単細胞生物と多細胞体制の違いについて話していた始めの数週間は特に大変だったのだけど、その後、germline specification、stem cells、cell competitionと進んでいったあたりから、ちょっと不思議な気分になってきた。始める前にシラバスを書いていた時点で、コース全体を通して一つの大きなストーリーになるようなイメージは持っていたのだけど、自分がこれまで20年以上に渡って取り組んできた色々な研究が、全てそのストーリーの一部としてぴったりはまっていくというような感覚。これまで自分の中では、それほど意識せずに行き当たりばったりで色々な研究をやってきたようなイメージを持っていたのだけど、実は知らず知らずのうちに一貫した興味を持ってやってきたことに気付かされた。つまり、授業という形で一つのストーリーを組み立てていく中で、自分が研究者として追い求めてきた「細胞の社会性とは何か?」というような大きな問いが見えてきた。大学のコースを作っていくことで自分の研究のコンセプトを再発見することになろうとはね。
アメリカの大学の先生は、結構こういう独自のcourse developmentをやる訳だけども、これは確かにものすごく勉強になる上に、改めて自分の研究を見直すことにもなる。そして、新しい独自のコースができると、それはかなり分量のある大きな物語になる訳で、本を書きたくなるんだろうなというのが分かってきた。

2025年10月21日火曜日

ACB後半戦

オフィスの窓からの景色も、どことなく秋らしくなってきた気がする。このところの授業は、cell competition、tissue homeostasis、apoptosis-induced compensatory proliferation、organ size controlとか、自分にとって一番馴染みのある専門のトピックが続いているので、少しの準備で自由にしゃべっている感じ。このコースもいよいよ後半に入ってきていて、ここまでかなり良い流れで来ていると思うのだけど、学生達が何らかのコンセプトに辿り着くために重要なのはここから。終盤までの流れをもう一度しっかり考えてみたい。のだが、Midterm examの結果はいつ出るんですか、みたいな問い合わせが数人から来ているので、まずは何らかの点数を出して安心させてあげるべきなんかねぇ。

2025年9月13日土曜日

序盤三週終了

忙しすぎて、ブログを書く時間がなかった二週間だった。。。
いやぁ、やっぱり新しいコースのデザインをするのはかなり大変ということを実感。まぁ春セメの「Genetic Model Systems」も完全に新しいコースだったのだけど、ぴったりのテキストブックが見つかって、それに沿って組み立てていったのでなんとかなった感じだった。今回の「Advanced Cell Biology」は、教科書は探せば色々とあるし、前任者の資料ももらおうと思えばもらえるのだけど、今回は教科書なしで完全に自分のアイデアをもとにコースを組み立ててみようという試み。そんな訳で、GPTとも相談しながら毎日文献を漁りまくってなんとか水曜と金曜の講義を間に合わせている。生徒は13人。講義をしていると、頷きながら一生懸命ノートを取っている学生が結構いるので、まぁまぁ皆ついて来てくれている感覚はある。

2025年8月30日土曜日

第一週目終了

秋セメ第一週目終了。やっぱり始めの週は疲れるね。まぁ、長い苦難の4ヶ月の始まりだけど、とりあえず学生達と一緒に今回のコースのパターンを確認できたという感じ。今回は毎週一つのトピックを決めて、水曜日に講義をして、そのトピックに関する論文を課題として渡す。生徒達はいくつかのグループに分かれて、翌週の月曜日にその論文の内容についてプレゼン&ディスカッション。金曜日は論文のバックグラウンドを講義して、残りの時間は翌週のプレゼンに向けて生徒達がグループに分かれて相談、という流れ。これでいくと、授業は月水金だけど、自分が講義をするのは水曜日の一回と金曜の前半だけということになる。よーし、これなら何とかいけそうやん、という手応えを得た。もちろんこういうスタイルは、自分がやる講義の負担を減らす工夫でもあるのだけど、学生にとってもプレゼンやグループディスカッションというのは、自然と積極的に参加して自分で考えることにつながり、いわゆるアクティブラーニングとして有効という感じがした。今後4ヶ月をかけてどんな感じになっていくのか、まぁまぁ楽しみになってきた。

2025年8月27日水曜日

ACB1

いよいよ新学期第一週が始まった。今回のコース「Advanced Cell Biology」の第1週目のテーマは、Evolution of Multicellularity。ということで、月曜に引き続き今日が2回目の講義。生命の長い歴史の中で、単細胞生物から多細胞体制への進化は様々な分岐群で何度も起こっているようだが、この大きな変化はなぜどのようにして起こるのかという話。今日は主に、ChlamydomonasとVolvoxの比較を例としながら話した。これは基礎生物学で結構一般的なテーマだけど、ものすごく根本的であり奥深い問いなので、やっぱり面白いよね。今回の生徒は学部のシニアから大学院生まで14名。今朝は結構熱心に聞いてくれている子が多い気がした。

2025年8月23日土曜日

Advanced Cell Biology

今週から新学期の開始ということで、今週は大学の色々な会議やイベントに参加していて、授業開始前の一週間が飛ぶように過ぎ去ってしまった。ということで、月曜から授業が始まるのだけど、まだまだ準備ができていない。この秋学期担当するのは、「Advanced Cell Biology」。月水金の朝9時から50分の講義。そして、それに加えて月曜の午後は「Advanced Cell Biology Lab」の実習まである。かなりヘビーだし、そもそもアドバンスドと言ってもCell Biologyなんてかなり広い分野なので、どうしたもんかとこの夏の間ずっと頭を悩ませていた。まぁいまだに悩んでいるのだが、とりあえず今週はシラバスを書かないといけなくて、ぎりぎりこの週末で完成させる。中間期末試験の週を入れると全16週、講義は全部で40回以上あることになる。一回が50分とは言え、どう考えても多すぎる。まぁ細胞生物学の分厚い教科書をなぞっていけば40回分のトピックはあるだろうけど、そんな退屈な授業はしたくないし、アドバンスレベルだからそういう基礎的知識はあるものとして考えたい。ということで、自分が考えている細胞生物学の一つのコンセプトを、学生たちと一緒に14週かけて追求していきたいと思う。
「From the origins of life to the social behavior of cells, differences between unicellular organisms and multicellular systems, and ultimately to the breakdown of these systems in cancer.」

2025年7月20日日曜日

Vanox

秋学期の授業開始まであと5週間。ということで、ちょっと具体的に授業の内容を考え始めないとなぁと思っている。今回教えるコースは「Advanced Cell Biology」で、月水金と週3回の授業。しかもこれと共に週一回の実習もあって、月曜日は朝が授業で午後は実習。これはだいぶヘビーやなという印象。そんなわけで、今から一ヶ月の間に少しずつ準備していきたいと思う。しかし、Advanced Cell Biologyの実習って何するねん?という感じ。前年度のシラバスを見ると、それってAdvancedなん?という感じのものであんまりピンとこない。まぁ確かに自分の学部生の頃の学生実習を思い出すと、そんなに面白かったようなものではないかも知れない。でもやっぱり“Advanced”なので、よくある一般的なものではなく、本当の研究に近いものでも良いのではないだろうか。せっかくだから、Drosophilaを使って将来的に論文に発展させることができるような実験を皆んなでやるというのはどうだろうかなと考えている。Genetic screeningとか。
ともあれ、とりあえず実習室にどれくらい使えるものがあるのか見に行ってみたところ、普通の光学顕微鏡はたくさんあったのだけど、蛍光顕微鏡がない。と思っていたら、隣の準備室みたいなところに、この写真のずいぶんレトロな感じの蛍光顕微鏡を見つけた。ネットで調べたらOlympusのVanoxという1970年代のものらしい。こんな古いやつは初めて見るけど、これって本当に蛍光シグナルを見れるんだろうか?電源を入れてみると一応ライトは点いたので、一度サンプルを作って試しに見てみようと思う。

2025年5月1日木曜日

GMS.15

今日から早くも五月で春セメスターもそろそろ終わり。来週が期末試験なので、その試験を作らないといけない。そしてその前に今日が最後の授業ということになるので、期末試験の準備になるような授業を用意してやろうと思っていたのだけど、昨晩は時差ボケによる眠気がすごくて晩御飯を食べる前に寝てしまった。で、目覚めてみるとまだ午前1時過ぎ。そんな訳で、朝までに授業の準備は大体できたのだけど、これだとまた今日も夕方に眠くなるんだろうなぁ。まぁ仕方ないか。
試験は、これまでに学んだことを踏まえて取り組むようなレポートが良いかなと。中間試験では、架空の心疾患を研究するための遺伝学モデルを考えて実験計画を立てるというものにした。期末試験は、実際にbioRxivで公開されているプレプリントの論文に対するレビューを行うというものにする予定。なので今日の最後の授業では、論文のピアレビューとはどういうものなのか、レビュワーはどういう役割を果たすべきなのか、というようなことについて話そうと思う。

2025年4月18日金曜日

GMS.9~14

そういえば授業内容について、8週目までこのブログで記録していたけど、Fly Meetingのあたりから忙しすぎて記録を怠っていたので、ここで簡単におさらいしておこう。

GMS.9:Genetic interaction, Epistasis, Modifiers
HypomorphとかAntimorphとかのterminologyの説明から始まり、ハエの複眼の赤色を作る2つのパスウェイ(PteridineとOmmochrome)におけるepistasisを紹介。そして、modifier screenの例として、ommatidium R7 cellの形成に関わるsevenlessのmutantがUVライトへの走性を失っている表現型を利用したdominant modifier screeningについて。

GMS.10:Review for mid-term exam
中間試験前にこれまでの授業の復習(San Diegoのホテルからリモート講義)

GMS.11:Targeted mutagenesis and genome editing I
Homologous recombinationとNon-homologous end-joining、マウスにおけるgene knockout、トランスジェニックマウスができるようになった歴史、そしてTamoxifen-induced CreER/loxPのシステムまで。

GMS.12:Targeted mutagenesis and genome editing II
CRISPR-Cas9について。1987年にCRISPR配列が発見されてから、それがファージに対するバクテリアの免疫システムであることが分かり、このシステムを利用したゲノム編集技術を開発したE. CharpentierとJ.A. Doudnaのノーベル賞の仕事まで。

GMS.13:Clonal analysis with genetic mosaics
まずはGynandromorphから。Drosophilaで発展してきた遺伝学的モザイク解析技術について。Gal4-UASとFLP-FRTの合わせ技、MARCMとかFlp-out Gal4システムまで話した。1970年代、FLP-FRTが開発される前、A. García-BellidoらがX線によってmitotic recombinationを誘導して、各種phenotypic markerを目印にモザイク解析をしていたのは本当にすごいなと思う。

GMS.14:Application of genetic analysis
Case study I: Cell competition and compensatory cell growth ということで、これまでに学んできた遺伝学実験手法が、実際の研究でどのように使われるのかを示す例として、自分のcell competitionとCCHに関する仕事を紹介。

こうして14週間の授業を振り返ってみると、これはなかなか素晴らしいコースになったのではないかと自画自賛したくなる。古典的なメンデルの遺伝学やモーガンの染色体説から始まり、X線によるmutagenesis、バランサー染色体、C. elegansハイデルベルグスクリーニング、トランスポゾンの発見、P-element、エンハンサートラップ、Gal4-UAS、RNAi、トランスジェニックマウス、相同組換え、CRISPR-Cas9、モザイク解析まで、生命科学の発展の基盤となった発見や遺伝学実験技術について歴史を追いながら見ていくことによって、体系的な知識を学ぶことができたのではないかと期待。少なくとも自分はこの辺りのことを今一度しっかり勉強できて良かった。まぁ、学生からの評価はまた追々。

2025年3月9日日曜日

GMS.8

先週の講義のトピックは、「Targeted misexpression and gene silencing」。ということで、基本的にはGal4-UASを用いたoverexpressionによるgain-of-function analysisと、RNAiによるtissue-specific loss-of-funtion analysisについて。後半はそのケーススタディとして、P. Léopoldラボから2012年に報告されたDilp8発見の論文を紹介した。この論文は、Gal4-UAS-RNAiがとても効果的に使われていると思う。1st スクリーニングは、rn-Gal4>avl-RNAiをテスターラインとして、発生遅延がレスキューされるUAS-RNAiをスクリーニングしているのだけど、10100ラインから121ラインを同定したとかサラッと書いているのがすごい。著者は3人だけど、ピエールはたぶん実験していないだろうと考えると、2人で10100クロスやったってことなんだろう。でもこのスクリーニングがすごいのは、rn-Gal4>rpl7-RNAiに切り替えて行った121ラインに対する2nd スクリーニングで、当たりが1ラインだけだったこと。狙った未知の仮想遺伝子がゲノムワイドスクリーンで一つだけ当たるっていうのは、仮説もストラテジーもドンピシャだったということよね。こらホンマにスゴイわぁ、と感心しながらこれまた熱く語ってしまった。おまけに、Dilp8の上流でJNKの関与を調べるためにpuc-lacZを使っていて、先週のエンハンサートラップの話と結びついたりもしたので、教材としてはなかなか良かったなと思う。

2025年3月4日火曜日

GMS.7

今週は、Mardi Gras(この地域のいわゆる謝肉祭)のお祭り期間で月火水は大学も休日、ということで火曜の授業は休講。
先週の講義は「Transposable elements II : Insertional mutagenesis」ということで、前回に引き続いてトランスポゾンの話の後編。前半は、ショウジョウバエでP-elementを使って初めて行われたエンハンサートラップによるゲノムワイドスクリーニングの話。1989年、H. Bellen(WJ Gehring lab)と E. Bier(YN Jan lab)らが、それぞれ P-lArB P-lacW を用いて行ったものであり、Genes & Devにback-to-backで発表されている。これらのP-elementを持っているハエと、3番染色体99BにΔ2-3(stable genomic P-transposase)が載っているハエを掛け合わせてジャンプスタートを作るというスキームはどちらも同じ。これらのスクリーニングから膨大な数のlac-Zリポーターラインが得られており、トランスポゾンのランダムインサーションを用いたスクリーニングが、mutagenesisだけでなくenhancer trapのようなゲノムワイドな解析に非常に有効であることを示したものである。
後半は、enhancer trapのlac-Zリポーターラインを用いた遺伝子発現解析について、実例を挙げながらその仕組みや問題点を説明。あと一応、Sleeping BeautyとPiggyBacの紹介もした。そんな訳で本来は今日、Sleeping Beautyを用いたマウスでのmutagenesisの論文について議論する予定だったのだけど、Mardi Grasで休みというのを忘れていたので、こちらは来週火曜に持ち越し。