2015年12月23日水曜日

腸上皮での細胞競合

さて、先週書いていた総説は細胞競合と組織修復に関してのものだったので、まぁ基本的にはcompensatory proliferationとCCHの話になる。これを書きながら今一度考えていたのは、やっぱりimaginal discみたいなproliferating/developing tissueでのcell competitionにおけるwinner cellsのcompensatory proliferationに関するメカニズムはちゃんと分かってないんとちゃうのんということ。つまり、competitionでのcompensatory proliferationは、apoptotic cellが出すDppとかWgとかが誘導する所謂 "apoptosis-induced compensatory proliferation" のメカニズムとはちょっと違うはず。だって、competitionの状態でloser cellのapoptosisを阻害してもneighboring cellにovergrowthは誘導されないし、その場合それどころかwinner cellのproliferationを抑えることによってfinal organ sizeの帳尻を合わせているようにも見える。ここで考えられるメカニズムの一つは Dilp8 かなと思う。つまり、imaginal discみたいな発生中の組織で、cell competitionのような正常な組織成長を乱す出来事が起こると、その組織でDilp8の発現がupregulateされる。このsecreted Dilp8が全身性シグナルとして中枢神経系を介して全身の発生遅延を促すことにより、competitionが起こっている組織がfinal sizeまで到達する時間を稼ぐというか待っといてあげる。discでcompetitionが起こると発生遅れたっけ?
まぁそれはさておき、じゃあ発生後、アダルトの組織におけるcompetitionでのcompensationはどうかというと、一つはDrosophila follicleみたいなpostmitotic tissue without stem cellsにおけるCCH。で、stem cellが近くにあるような組織での例はというと、少し前にピッディーニ先輩のところからDev Cellに報告されたこの論文で報告されている。そういう意味でこの論文は非常に重要。

Cell competition modifies adult stem cell and tissue population dynamics in a JAK-STAT-dependent manner.  Dev Cell. 34: 297-309.

この論文ではDrosophila adult mid gutをモデルにMinute vs. WTのcell competitionを見ているのだが、このときWT intestinal stem cell (ISC) のproliferation rateとself-renewal frequencyがともに亢進することによって、WT winner cloneによるcompensationというかcolonizationが起こることが示されている。しかも、M/+ ISCのproliferation rateは亢進していないことから、この効果はselectiveだと言える。ところどころデカイ細胞が出てきているように見えるFigがあるけど、enterocytesはもともとendoreplicationでpolyploidになっているのでCCHが起こっていても不思議ではないな。で、このwinner ISCのproliferation rateが亢進するメカニズムは、JNK → Upd-3 → JAK/STAT activation なんだそうな。彼らが目をつけたのは、Tamori & Deng 2011で示されていた "chronic JNK activation in M/+ wing discs”(全ての細胞がM/+で競合が起こっていないdiscでもcell-autonomous JNK activationが起こっている)。やはりM/+ gutでも同様にchronic JNK activationが起こっており、WTとのcompetitionではこれがUpd-3 upregulationを介してnon-autonomousにWT ISCのproliferationを促していると。つまり「In this tissue, increased cell death is not necessary to promote the clonal expansion of fitter cells. Instead, the overgrowth of healthy cells during competition depends on JNK signaling activation.」ということになる。chronic inflammatory responseというわけやね。せやけどもしそうなら、なんでM/+ homogeneousのgutでISCのproliferation rateがWTよりも低いのかはよう分からんな。upd-3>GFPもSTAT-GFPもM/+ gutではintrinsicにupregulateされてるのに。。。でもそういや、eye discでM/+とかscribのmutant cloneがstat92E mutantとconfrontした場合にcompensatory proliferationが機能しないというのもあるし(Wu et al. Nature 2010、確かにこれと同様のことがdiscでも起こっている可能性はあるよね。


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