2017年1月30日月曜日

NAA: non-cell-autonomous autophagy

ノルウェー、オスロのDr. TERのところから、つい最近Natureに報告された論文。最後まで見所が続くエキサイティングなお話だった。Dr. TERとはいつ頃知り合ったんだっけな。ジョンピーがまだ学生の時に少しの間Dr. TERのラボに出向していたことがあって、たぶんどこかの学会でジョンピーに紹介してもらったんだと思うけど。去年のFly MeetingでもWM labの集まりに来ていたDr. TERとテーブルが一緒だったので、その時にも研究の話を色々としたはずなんだけど、そういやあの時この論文に関することは何も言ってなかったな。

Microenvironmental autophagy promotes tumour growth.  Nature 541: 417–420.
As malignant tumours develop, they interact intimately with their microenvironment and can activate autophagy, a catabolic process which provides nutrients during starvation.  How tumours regulate autophagy in vivo and whether autophagy affects tumour growth is controversial.  Here we demonstrate, using a well characterized Drosophila melanogaster malignant tumour model, that non-cell-autonomous autophagy is induced both in the tumour microenvironment and systemically in distant tissues.  Tumour growth can be pharmacologically restrained using autophagy inhibitors, and early-stage tumour growth and invasion are genetically dependent on autophagy within the local tumour microenvironment.  Induction of autophagy is mediated by Drosophila tumour necrosis factor and interleukin-6-like signalling from metabolically stressed tumour cells, whereas tumour growth depends on active amino acid transport.  We show that dormant growth-impaired tumours from autophagy-deficient animals reactivate tumorous growth when transplanted into autophagy-proficient hosts.  We conclude that transformed cells engage surrounding normal cells as active and essential microenvironmental contributors to early tumour growth through nutrient-generating autophagy.

まず、Drosophila eye discsに誘導されたRasV12-expressing scrib mutant clones (RasV12 scrib) が形成するtumorの周りの細胞でautophagy activityが亢進している(Atg8aが蓄積)、という発見からお話が始まる。しかもこのautophagy activityの亢進はeye discの周辺細胞だけではなく、muscle、fat body、midgutといった他臓器でも観察されるのだ。その一方で、RasV12 onlyのbenign tumorの場合、これらのautophagyは観察されない。autophagy flux inhibitorのchloroquineの経口投与によってautophagyを抑制すると、このeye discのtumor growth and invasionが抑えられた。ところが、eye discのtumor tissue内でautophagyを阻害した場合、tumor growthは若干抑えられるだけで、ventral nerve cordへのinvasionは抑えられなかった。これに対し、tumorの周辺細胞、もしくはtumorと周辺細胞の両方でautophagyを阻害すると、tumor growthもinvasionも抑制された。つまり、RasV12 scrib tumorのinitial tumor growth and expansive invasionにはnon-cell-autonomous autophagy (NAA) が必要であるということになる。
これまでの研究によって、RasV12 scrib tumorの growth and invasionには、TNF–JNK–Fos and IL-6–JAK–STAT cytokine signaling pathwaysの関与が分かっている。TNF (Eiger) mutant background、もしくはtumor内でのJNK activityの阻害(bskDN expression or fos mutant)によって、確かにNAAも抑制される。一方、このtumor内でのTNF-JNKの阻害によって、他臓器におけるsystemic autophagyはそれほど抑えられることはなかった(gutでは結構抑えられてるけど)。RasV12 scribのtumor growthにおいて、JNKの下流でHippo signalingが関与しているということも既に報告がある。で、これまたYkiかSdをRasV12 dlg tumorでノックダウンすると、tumor growthとNAAは抑制されることが確認された。
こういうコンテクストでYki、Sd、Fosのターゲットといえば、Impl2、Upd1, 2, and 3である。これらの関係を調べたところ、Impl2はNAA inductionに必要ないが、RasV12とUpd1 or 3のco-overexpressionはNAAを促すことが分かった。つまり、cytokine UpdがNAA inductionをmediateしていると考えられる。そこで、tumor tissue内でJAK-STAT signalingを阻害すると、NAAは確かに抑制されるのだが、周辺細胞でJAK-STAT signalingを阻害しても周辺細胞におけるNAAは抑えられなかった。つまりUpdはtumor cellsにおいてautocrineで働いているということになる。
RasV12 scrib tumorではミトコンドリアがダメージを受けており、reactive oxygen species (ROS) の産生が増加していることも分かった。ND75のノックダウンによるmitochondrial ROSの増加はNAAを促す。RasV12 scrib tumorにおけるJNKもしくはJAK-STAT signalingの阻害は、どちらもROSの蓄積を抑制することができる。つまり、RasV12 scrib tumorにおけるROSと周辺細胞におけるNAAの増加は、どちらもFos-, Yki/Sd- and STAT-mediated mitogenic signalingによるものと言える。また、RasV12 scrib tumorではglucose analogue 2-NBDGの増加が認められ、cationic and neutral amino acid transporterのslimfastをtumor内でノックダウンすると、RasV12 dlgのtumor growthが抑制されることから、これらmetabolic stressを受けているtumorの増殖能の維持はnutrients importに依存しているとも考えられた。
このtumor growthに必要なnutrients importのNAAへの依存性を確かめるために、allograft experimentが行われた。eye discのRasV12 scrib tumorを移植したアダルトの個体ではautophagy activityが上がり、このallograft tumorは、ホストへのautophagy inhibitorの投与、もしくはホストがatg14 mutant backgroundを持っている場合にtumor growthが抑制された。さらに驚くべきことに、autophagy deficient (atg13 mutant) のRasV12 scrib tumorのallograftは、autophagyが正常なcontrol hostのアダルト個体に移植されると、regrowthを始め大きなtumorに成長するのが観察された。つまり、tumor growthはtumor locationやoriginal tumor environmentではなく、ホストのautophagy capacityに依存しているということを示している
ふーむ、ちょっとややこしいしけど、スゴイことを示しとるな。かなり複雑なgeneticsを使った実験が多いので、フライガイ以外の人にとっては実験系を正確に理解するの難しいんじゃなかろうか。ところで、他臓器でautophagy activityが亢進するsystemicなメカニズムってなんなんやろかね。

2 件のコメント:

  1. Fig.4が個人的にはすごくビビってきたですね。Fig3.まではRasV12 scrib -/-のtumorでありそうなお話だったわけですが、移植実験をすることで、(おそらく)全身性のnutrient import/authophagyがsomehow 移植したtumor growthに必要 、ということが示されていてオオーて思いました。

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    1. そうそう、そうなんよね。そのあたり、かんなりスゴイことを示しているんだけど、systemicなmechanismについてはほとんど触れてないんよな。続きが楽しみやわー。

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