2021年12月10日金曜日

ネオテニー!

昨日、Facebookで流れてきたニュースに驚愕した。そのニュースのタイトルは、「日本のウーパールーパー89年ぶり発見。胆振の池、生殖能力備えた幼形成熟」。なんと!エゾサンショウウオのネオテニー個体がついに見つかったんだという。言葉を失った。まぁ、このニュースを見て驚愕したり感動したりする人はそれほど多くはないのだろうけど。。。
エゾサンショウウオのネオテニー個体群(幼生のまま変態せずに生殖をする、いわゆるヘテロクロニー)は、1924年に北海道の倶多楽湖で発見されたのだが、養殖魚が導入されたせいでその後絶滅してしまったのだ。自分が学生の時にお世話になった若原先生の研究室では、このエゾサンショウウオのネオテニーの仕組みを研究していた。そんな訳で、若原先生はじめ研究室のメンバーは皆、エゾサンショウウオのネオテニー個体群は倶多楽湖の他にも必ずどこかに棲息しているはずだと信じて、北海道のいろんな場所を探し回っていたのだ。そんなロマンを追う先生のもとで、学生達も皆同じようにロマンを感じていたのだと思う。あの頃、結局ネオテニー個体群を見つけることはできなかったものの、広い北海道のどこかに潜んでいるのではないかとその後もずっと思っていた。あれから十数年、それがついに見つかったのだ。ということで、これは本当にうれしいことなんだけど、こうなってくるとやっぱりこのネオテニー個体がどういう仕組みで幼形成熟しているのか、ちゃんと研究してみたくなるねぇ。
発表された論文はコチラ
Paedomorphosis in the Ezo salamander (Hynobius retardatus) rediscovered after almost 90 years. Zoological Letters, 7:14.
Although paedomorphosis is widespread across salamander families, only two species have ever been documented to exhibit paedomorphosis in Hynobiidae. One of these two exceptional species is Hynobius retardatus in which paedomorphosis was first reported in 1924, in specimens from Lake Kuttara in Hokkaido. This population became extinct after the last observation in 1932; since then, no paedomorphs of this species have been reported anywhere. Here, we report the rediscovery of paedomorphs of this species. Three paedomorph-like male salamanders were collected from a pond in the south Hokkaido in December 2020 and April 2021; in size, these specimens were similar to metamorphosed adults but they still displayed larval features such as external gills and a well-developed caudal fin. An artificial fertilization experiment demonstrated that they were sexually compatible with metamorphosed females, thus, confirming them to be paedomorphs. Future efforts to find additional paedomorphs in this and other populations are required to assess the prevalence of paedomorphosis in H. retardatus and to improve understanding of the ecology and evolution of paedomorphisis in Urodela.

2 件のコメント:

  1. 昨年の秋に共著者の岸田さん(道前君の友人)からxxxでネオテニー個体が見つかった、という連絡があり、論文作成のためのいくつかの資料(古い論文など)を送ってあげました。正式な論文になるまで秘密にしてほしい、ということでしたが無事立派な論文になってうれしい限りです。現役を離れて10年以上たちましたが、久しぶりに興奮しました。やはりネオテニーはロマンを掻き立てますね。生態学者の論文なので、生理的な研究やバックグランド(山口論文や神由論文など)画引用されていないのが不満ですが、まあ仕方がないでしょう。北海道でNHKのニュースにもなり大きく報道されています!

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    1. なるほど、そうだったんですね。いやぁ、本当に驚きましたし興奮しています。岸田君が苫小牧研究林で研究を続けていることは知っていましたが、まさかネオテニーを発見するとは。確かに今回の論文で調べられている生理学的な部分は精子だけですが、見つかったのが数匹のオスだけだったということで解剖という選択肢はなかったのでしょうね。見つかった池は1998年に掘られた池で、ネオテニーと変態する個体が共存しているようなので、環境依存的にネオテニーが生じ始めているということなのでしょうかね。ともあれ本当にエキサイティングです。早速道前さんと連絡を取って、また一度みんなで札幌に集まってお祝いしたいですねという話をしていました。

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