2010年2月6日土曜日
JYの論文
以前うちのラボに在籍していたポスドクのJYの論文がつい先日Developmental Cellにアクセプトされたということで、ボスが今日のラボミーティングでその内容を発表していた。内容については随分前にJYから聞いていたし論文の原案を読ませてもらったことがあったので特に驚きはないのだが、実はこの論文、かなり危うい事情があったので自分としてはDevelopmental Cellにアクセプトされたというその事実に非常に安心したのでした。この論文はHippo pathwayの新しいコンポーネントを発見したという論文なのだが、実は去年9月のバルセロナでロンドンのDr. NTが全く同じ遺伝子について発表していたのだ。しかも、この遺伝子の発見に到るスクリーニングの方法こそ全く違っていたが、同定後のHippo pathwayの中での位置付けに対するデータも解釈もほとんど同じだった。バルセロナでこのDr. NTの発表を聞いたとき単純にコレはヤバイと思ったのは、JYの論文が先を越される可能性はもちろんだが、もう一つそれに拍車をかける不運な背景があった。というのも、実はJYがこの仕事の前にやっていたプロジェクトの論文も、その投稿中にほぼ同じデータの論文が先に世に出てしまいタッチの差で先を越されてしまったという過去があったのだ。しかも今回と同じDr. NTのラボに。当然その時JYは非常にショックを受けて、結局JYはうちのラボを去っていった。もし今回もまた先を越されてしまってはJYはこれまた立ち直れないほどのショックを受けるんじゃないかと心配していたのでした。どちらも非常にイイ仕事なのになんと運の悪いヤツだろうと思っていたが、バルセロナでの報告を受けた後急いで論文を投稿して今回はなんとか先を越されずに済んだようだ。いやはや本当に良かったと思うと同時に、この短期間でDevelopmental Cellに押し込んだ今のJYのボス、Dr. DPの力にも恐れ入った。
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