それでは皆様、良いお年を!
2021年12月31日金曜日
大晦日 2021
ということで2021年ももうすぐ終わり。今年も一年、結局なんやかんやでコロナが終わらなかったけど、今年の後半はおかげさまでいくつか他のラボとの共同研究が形になり始めたし、今月久しぶりに飛行機に乗って札幌へ行くこともできた。来年はもう国内も国外もほとんどの学会が現地開催で計画されているので、また出張していろんな人に会うことができ始めるだろうか。オンラインでのミーティングには慣れたし便利な面も多いのだけど、対面でセミナーを聞いたり共同研究先で一緒に実験をしたりという機会が最近少し戻ってきて、やっぱり自分には実際に人と会って交流するのが大切なんだなと実感した。ということで、来年もっとそういう機会が戻ってきて多くの人と交流して研究を進めることができればと思う。
2021年12月30日木曜日
2021年12月28日火曜日
twin peaks
昨日はまた朝からみんなで幼虫の解剖をして午後からFACS。FACSでmosaic cloneをソートしてscRNA-seqというイベントはとりあえず終わったので、次はFACSによるploidy解析法を確立するための実験。これに関してはこれまでにいろんな方と何度もやってきて、結局クリアーなploidyのピークが得られなかったのだけど、今回ついにコントロールのサンプルでシャープなピークを見ることができてちょっと感動した。今までプロテアーゼ処理とかDNA染色とか固定とかサンプル調整の各段階の条件を検討してきたけど、今回 J が見つけてきた方法でやると固定しなくてもクリアーなピークを得られることができそうだ。ということで、いよいよ年明けにこれまでずっと見たかったものが見える可能性が高まってきた。
2021年12月25日土曜日
2021年12月24日金曜日
First contact
おぉ、早くもクリスマスイブ。今日は朝にフライデーミーティングをした後、午後のジャーナルクラブは自分の発表の番だった。今回紹介したのは以下の論文で、少し前にTwitterで流れてきた下のムービー、microfluidic chipの中で再現されたmouse embryo(緑)とendothelial cells(橙)のファーストコンタクトが美しくて、ただそれを皆に見せたかったというのがこの論文にした理由。まぁそれにしても、このtrophoblastのinvasionとウチらが見ているtumor cell invasionは類似点が多い。
3D biomimetic platform reveals the first interactions of the embryo and the maternal blood vessels. Developmental Cell, 56:3276-3287.e8.
2021年12月23日木曜日
30匹
先月、生理研に行ってSBF-SEM用に樹脂包埋したwing discは、その後技官の方にサンプルの端から少しずつ削ってもらって、サンプルの向きや場所を確認するという作業を行なっていた。組織を少し削っては超薄切片の画像を送ってもらって、こちらはその画像を見てどこからスキャンを始めるかを考えるという手順を数週間繰り返していたのだけど、やはり組織切片像だけで微妙な向きや場所を見極めるのはかなり難しいという結論に至った。ということで今週もう一度、新たに幼虫を30匹解剖して送付した。今回は、前回使った真っ黒な導電性樹脂だけでなく、普通の透明の樹脂にも包埋して試してみる予定。また年明けあたりに岡崎へ包埋しに行くことになるかな。
2021年12月17日金曜日
書評
今日が締め切りだった本の書評は、昨晩書き終えて今朝編集部に原稿を送った。少し前にこのブログでも紹介した新書「遺伝子命名物語」についての書評を掲載したいという某雑誌からの執筆依頼。本の書評を書くのは初めてだけど、本当に面白い本だったし、何より自分の話も取り上げてもらった本だし、ということで快諾したのだった。ショウジョウバエ研究者のメーリングリストでこの本を紹介したときは、ちゃんと丁寧な文章にしたのだけど、今回はかなりくだけた文体のエッセイみたいな文章にした。たまに読むネット上の書評で、大阪弁の話し言葉で本の紹介をしてくれる某先生の文章がとても読みやすいので、自分もそういう感じでいくかなと思って書いたらかなり書きやすかった。まぁ、ブログの文体と同じ感じかな。そんな訳で、結局編集部から言われていた2倍くらいの文字数になってしまったけど、担当の方からはすぐに返事が来て、すごく良い!ということだったので、とりあえずはゲラ刷りが来るのを待つ。
2021年12月14日火曜日
67
昨晩、日付が変わるぎりぎりまでかかって昨日が締め切りだったシークレットミッション67本をようやく完遂した。この分厚い電話帳みたいな2冊の全ページに目を通して1本ずつ全てにコメントを書いたなんて、ちょっと自分でもすごいと思う。昨日の朝の時点でまだ結構残っていたし、昨日は午前中に忘れていたミーティングがあったし、午後には一つ学位審査会にも出席しなければならなかったし、ということで大変な一日だった。頭を使いすぎたからか、今朝起きてもまだなんか頭が重い。まぁ少し達成感はあるのだけど、今週はまだもう一つ金曜日に執筆の締め切りがある。
2021年12月11日土曜日
2021年12月10日金曜日
ネオテニー!
昨日、Facebookで流れてきたニュースに驚愕した。そのニュースのタイトルは、「日本のウーパールーパー89年ぶり発見。胆振の池、生殖能力備えた幼形成熟」。なんと!エゾサンショウウオのネオテニー個体がついに見つかったんだという。言葉を失った。まぁ、このニュースを見て驚愕したり感動したりする人はそれほど多くはないのだろうけど。。。
エゾサンショウウオのネオテニー個体群(幼生のまま変態せずに生殖をする、いわゆるヘテロクロニー)は、1924年に北海道の倶多楽湖で発見されたのだが、養殖魚が導入されたせいでその後絶滅してしまったのだ。自分が学生の時にお世話になった若原先生の研究室では、このエゾサンショウウオのネオテニーの仕組みを研究していた。そんな訳で、若原先生はじめ研究室のメンバーは皆、エゾサンショウウオのネオテニー個体群は倶多楽湖の他にも必ずどこかに棲息しているはずだと信じて、北海道のいろんな場所を探し回っていたのだ。そんなロマンを追う先生のもとで、学生達も皆同じようにロマンを感じていたのだと思う。あの頃、結局ネオテニー個体群を見つけることはできなかったものの、広い北海道のどこかに潜んでいるのではないかとその後もずっと思っていた。あれから十数年、それがついに見つかったのだ。ということで、これは本当にうれしいことなんだけど、こうなってくるとやっぱりこのネオテニー個体がどういう仕組みで幼形成熟しているのか、ちゃんと研究してみたくなるねぇ。
Paedomorphosis in the Ezo salamander (Hynobius retardatus) rediscovered after almost 90 years. Zoological Letters, 7:14.
Although paedomorphosis is widespread across salamander families, only two species have ever been documented to exhibit paedomorphosis in Hynobiidae. One of these two exceptional species is Hynobius retardatus in which paedomorphosis was first reported in 1924, in specimens from Lake Kuttara in Hokkaido. This population became extinct after the last observation in 1932; since then, no paedomorphs of this species have been reported anywhere. Here, we report the rediscovery of paedomorphs of this species. Three paedomorph-like male salamanders were collected from a pond in the south Hokkaido in December 2020 and April 2021; in size, these specimens were similar to metamorphosed adults but they still displayed larval features such as external gills and a well-developed caudal fin. An artificial fertilization experiment demonstrated that they were sexually compatible with metamorphosed females, thus, confirming them to be paedomorphs. Future efforts to find additional paedomorphs in this and other populations are required to assess the prevalence of paedomorphosis in H. retardatus and to improve understanding of the ecology and evolution of paedomorphisis in Urodela.
2021年12月3日金曜日
札幌4日目
今日も昨日と同じ手順で、さらに多くの幼虫を解剖してAFM解析。1日目に条件検討を行なって、昨日2日目は実際に実験データがちゃんと取れたのだけど、3日目の今日はそれらを踏まえてさらに要領良くデータを取ることができた。ということで、この3日間で合計24個のwing discそれぞれから4点、つまり全部で96地点でのAFM計測データを得ることができたということになる。AFMに慣れているSI博士にとってもこれは初めての実験になる訳で、はっきり言ってここまできちんとデータを取れるとは思っていなかった。まぁこのデータを解析して、ポジティブなデータが得られるかどうかはこれからだけど、ともかく全ての計測をしてくれたSI博士、そして解剖の場所を提供してくれたNT博士にも感謝。久しぶりにいろんな人と会うこともできたし、コロナ後初の出張は本当に実りあるものになった。
2021年12月2日木曜日
札幌2日目
今日は朝からSI博士のいる理学部2号館へ行って、まずは今回やる実験の打ち合わせ。昼は中央食堂でうどんを食べてから、Uさんに会うために北キャンパスまでぶらぶらと歩いた。Uさんのラボでは小一時間ほどお互いの近況を話し合ってから、構内循環バスで理学部に戻ってきていよいよ実験開始。ということで、まずは理学部5号館にいるTさんのラボで実体顕微鏡を借りて幼虫の解剖をして、解剖したimaginal discを持ってもう一度2号館へ戻って、SI博士と一緒に原子間力顕微鏡(AFM)を使った解析に挑んだ。AFM解析に慣れているSI博士とはいえ、ショウジョウバエの組織を解析するのは初めてということで、セッティングに少し時間がかかったけど、最終的にはなんとかそれっぽいデータが出始めた。AFMでは、肉眼で見えるか見えないかくらいの微細なレコード針みたいなカンチレバーを細胞の表面に接触させてその反応を記録する訳だが、そのカンチレバーの接触によってimaginal discが微妙に揺れてしまうことでデータにばらつきが出てしまうようだ。明日、さらにこの辺りを改善しながらデータを取ることができればと思う。
2021年11月30日火曜日
札幌1日目
今日から札幌出張。2018年から始まった共同研究による実験が、この2年ほどの間、コロナのせいでなかなかできていなかった。しかしこの共同研究のための研究費は今年が最終年度だし、そろそろコロナも収まりそうだし、ということで少し前から計画していた北大のSI博士の研究室での共同実験がようやく実現することになった。今日はとりあえず移動日。午後にラボを出て、札幌のホテルに辿り着いた頃にはもうすっかり暗くなっていた。札幌に来るのは京都に引っ越して以来だから、1年9ヶ月ぶりくらいか。まぁでも長く住んでいた街だから、久しぶりな感覚もあまりないくらい馴染みの風景。前に時々通っていた小さなジャズ喫茶で晩御飯を食べている時にようやく、あぁ懐かしいなぁと思った。
2021年11月26日金曜日
2021年11月22日月曜日
2021年11月18日木曜日
包埋
昨日は一日、岡崎の生理学研究所へ日帰り出張。名古屋の近くだし、まぁそんなに遠くもないよな、と思っていたけど、意外と名古屋からかかるし名古屋駅の辺りはすごい人だしでちょっと疲れた。生理研に到着後、サンプルの調整を進めてくれていた技官のお二人と色々相談した結果、やはり包埋作業は自分が行うことに。というのも、まずwing discのサイズがお二人が想像していたものより遥かに小さかったようで、かなり驚かれた。もちろん自分はこの小ささには慣れているし、以前にもwing discを電顕用に樹脂包埋したことがあるので、それほど難しくはないだろうと思っていたのだが、今回使うSBF-SEM用の包埋剤が真っ黒なペースト状のものであることを知って、自分もちょっとたじろいだ。ブロック染色を終えて真っ黒になった 0.5mm にも満たないような組織を、これまた真っ黒なクリームのような包埋剤に馴染ませてその中での組織の向きを調整するなんてちょっと不可能に思えたのだ。そんな訳で、今回は包埋剤の中でこねて馴染ませることは諦めて、とりあえず向きを確認しながら包埋剤に沈めるという作業を行なった。これならそこまで大変な作業ではなかったのだけど、そもそもここまでの染色の過程でwing discが体から外れてしまったものが多かったようで、今回準備した10個体からきれいに取れたのは2つだけだった。まぁwild typeだから、もしもう一度やる必要が出てきたら次はもっとたくさん用意しましょう、ということになったので、またそのうちもう一度行くことになるかも知れない。
帰りがけに岡崎城を一目見て帰ろうと思って少し歩いたら、城のある公園に着いた頃にちょうど日が沈んで綺麗な夕景を見ることができた。
2021年11月16日火曜日
SBF-SEM
きっかけは忘れたのだけど、少し前に先端バイオイメージング支援で電子顕微鏡解析を一緒にやってもらえないかと思って、オンラインでプレコンサルティングをしてもらった結果、意外とあっさり支援してもらえることになった。Drosophila wing discで、うちらがinvasion hotspotと呼んでいる場所の組織構造が他の場所とどのように異なっているのかを見るために、Serial Block-Face Scanning Electron Microscopy(SBF-SEM)で細胞の構造を徹底解析するという内容。自分がまだ遺伝研にいた時にも全く同じことをしようと思ってサンプルの準備をしたのだが、その時は組織の形態保持がうまくいかず、北大への異動もあって長らく置いたままにしていた。でもやっぱりこの他とは構造が違っている場所がinvasion hotspotかも知れないということになってきて、やっぱりココの細胞の形態を詳しく見る必要が出てきたという訳。そんなことで明日、久しぶりに岡崎の生理学研究所へ行って、向こうのスタッフと一緒に樹脂包埋の作業をすることになった。こちらで日曜日の朝に解剖して電顕用の固定液に入れた状態でクール宅急便で送付したサンプルは、生理研の方でブロック染色〜樹脂浸透のプロセスを進めてくれている予定。
2021年11月12日金曜日
2021年11月7日日曜日
2021年11月6日土曜日
2021年11月4日木曜日
2021年11月1日月曜日
77700
あれよあれよと言う間に11月。そして今日はついにscRNA-seqの本番。という訳で、朝フライルームに集まったのだが、どうも幼虫達の発生がいつもより少し早くてほとんどが既に蛹化し始めていた。慌ててみんなで取れそうなサンプル数を確認したところ、モザイククローン用に30本用意したバイアルから取れたのは70匹と少し。予定していた150匹の約半分になるけど、前回のシミュレーション結果に基づけば十分な細胞数が取れるはずと見込んで10時半頃から5人で解剖をスタートした。なるべくロスのないようにということで解剖後も緊張の作業が続いたのだが、ほぼ予定通りの15時頃にソーティングが終了。コントロールは50万細胞、実験サンプルのGFP陽性モザイククローンは7万7千7百細胞回収できた。一つ問題が生じたのはChromiumでのシングルセル分画化のステップで、コントロールの細胞は綺麗にエマルジョン化されたのに、なぜかモザイククローンの方がうまくいかない。東大から来てくれたシーケンスチームの方によると、恐らくマイクロ流路のどこかで詰まっているのではないかということ。2回やってダメだったので、3度目はもう一度フィルターを通してからアプライしたらようやくエマルジョン化されたのだが、ここで1時間以上ロスしてしまい、この時点で時計は既に17時をまわっていた。その後、RTをかけて18時過ぎに今日の作業が終了。今頃サンプルは東大の方とともに新幹線で東京に向かっているはず。細胞の生存率を上げるためになるべく短時間でということを目指していたので、Chromiumのステップで予想外のトラブルがあったのは痛いところだが、ここは自分達ではシミュレーション出来なかった部分なので仕方がない。必要量の生細胞がちゃんとプロセスされていることを祈るのみ。
2021年10月27日水曜日
500000
今日は、来週月曜日に迫って来たscRNA-seqの最後の予行演習の日。FACSソートした後の細胞の液量を減らして濃縮するプロセスで、細胞がチューブの壁面にくっついたりして収量が激減してしまうという問題を解決するために、うちの培養細胞チームから教えてもらった細胞回収用チューブのBSAコーティングを導入して回収率を検討した。その結果、100個のwing discから分離した細胞をFACSにかけてGFP陽性生細胞をソートしてくると、これまでに比べて大幅増量の、なんと50万個も回収することができた。つまり、今まで相当数の細胞がチューブの壁にひっついて回収できていなかったことが分かる。で、その後に遠心をかけて細胞を濃縮してからもう一度FACSにかけてみると、今度は生細胞の数がかなり減ってしまったのだが、この時点で解剖してから6時間くらい経つし、2回ソーティングした結果ダメージを受けてかなりの細胞が死んだのだと思われる。まぁでもこれでついにプロトコールは固まったので、あとは本番、5人でどれだけ手際良くやれるかにかかっている。
2021年10月25日月曜日
基礎配属研究発表
今日は、医学部の基礎配属実習でうちに来ていた T の研究発表。今朝もう一度一緒に発表スライドのチェックをしてから、午後の発表に挑んだ。T はこの二ヶ月間の実習だけでなく、本人の希望で夏前からうちのラボに出入りしていて、研究生の R が大学院入試の準備で休んでいた一ヶ月間は R の代わりに論文に追加する予定の実験をしていた。そのようなこともあって、今日の発表は結構なボリュームになった。今回の実習のために思い付いたHypoxiaのミニプロジェクトも、なんかこれから発展しそうな実験データがいくつかあってなかなか面白い。T は、来月ある医学部の大事な試験が終わったらまたラボに戻って来たいということなので、またこの続きをできるだろう。
2021年10月23日土曜日
2021年10月22日金曜日
2021年10月21日木曜日
construct
なんか急に冬みたいになりましたなぁ。つい先週までまだ昼間は夏のような暑さだったのに。季節の変化が急すぎて体がついていっていない感じ。今週は、この夏からうちのラボに来始めている学部1年の学生にFly Geneticsのレクチャーをしたり、推薦書を書いたり、何やかんやとミーティングをしたりとかしているうちに時間が過ぎていってしまっている。のだが、今週からちょっと真剣に、新しいGenetic toolを作るためのDNAコンストラクトの設計に取り掛かる。
2021年10月15日金曜日
once more
そのようなことで、今日がscRNA-seq前の最後の予行演習かと思っていたのだが、細胞調整の最後のステップとしてFACSソートした後の細胞の液量を今の1/100くらいまで減らさなければいけないことに気が付いた。もちろん遠心して濃縮すれば良いのだが、以前の経験から、その過程で細胞がチューブの壁面にくっついてしまったりして収量がかなり落ちてしまうことが分かっている。なので、やはりチューブ類に細胞がくっつかないような何らかのコーティングをして、それを使って遠心濃縮した時にちゃんと細胞が残っているかを確認する必要が出てきた。ということで、来週か再来週にもう一度最終予行演習をすることになりそう。。。まぁ一発勝負なので、念には念を入れて準備するに越したことはない。
2021年10月12日火曜日
simulation
今年度が最後になる新学術領域の先進ゲノム支援でsingle-cell RNA-seqをやってもらえることになったので、この3ヶ月ほどの間、そのためのサンプル調整のシミュレーションを続けている。Drosophilaだとembryoとかbrainとかimaginal discとか、wild type tissueのsingle-cell transcriptomicsというのは増えてきたけど、mosaic mutant cloneに対するものはまだそれほど多くはない印象。まぁ、ショウジョウバエは組織自体がとても小さくて、その中のモザイククローンとなると細胞数がかなり少なくなってしまうから、必要な数の目的の生細胞を取ってくるのはなかなか難しいということになる。3rd instar larvaeのwing discの細胞数は約5万と言われている。前回は80匹の幼虫、つまり160個のwing discから細胞を分離して、FACSでGFP陽性細胞をソートしたところ、約4万個の細胞を収集することができた。この4万個がFACSにかけた細胞のうち約7%だった、ということは全部で約57万細胞があったということになる。計算上5万 x 160disc = 800万細胞あったはずだけど、組織から細胞を分離してくるプロセスでその9割以上をロスしてしまっているということか。ともあれ、ウチで見ているtumor cloneは、組織内の場所によってphenotypeに随分違いがあって、各々のphenotypeを示すクローン特異的に発現している遺伝子もいくつか同定しているので、scRNA-seqをした時にどのクラスターがどのphenotypeのクローンかということを同定できるだろうと見ている。
今日、東大のシーケンスチームと相談して、我々が準備する細胞をscRNA-seq用の処理をするために、わざわざ向こうから京都へ来てくれることになった。本番は11月1日の予定。
2021年10月7日木曜日
遺伝子命名物語
名前に秘められた生物学のドラマ
坪子理美/石井健一 著
ちょうど3年ほど前になるのか、まだ札幌にいたときにこの本の著者の御夫婦から急に連絡をもらってスカイプでインタビューを受けた。遺伝子の命名をテーマとした新書を執筆中とのことで、自分が2010年の論文で名前をつけたMahjongの命名の経緯や当時の研究の様子について聞きたいということだった。当時サンディエゴに住まわれていたご夫婦とかなり長い時間スカイプをして、自分がアメリカで研究していた頃のエピソードを色々と話したことを覚えている。その後、その時話した内容をもとに書かれた原稿は何度か校正のために読ませてもらっていたのだけど、ついにその本が10月8日に刊行されるということで、完成した本が送られてきた。本は全部で10の遺伝子に関する物語で構成されているのだが、なんと自分のMahjongの話は第一章で、しかもファーストポスドクの時の大波乱幕開けの場面から。まさか自分の研究のエピソードが本の一章になるとは、なんか変な感じだけど自慢したくもなる。どの章も単にユニークな遺伝子の名前が生まれたエピソードというだけでなく、各々の研究に関わった研究者達のドラマチックな実話が紹介されている。まだ全てを読んだ訳ではないけど、どの話もすごく面白いと感じたのは、自分が生物学の研究者だからというだけでなく、語り口が素晴らしいのだと思う。ほとんどの話がショウジョウバエの遺伝子にまつわる話だけど、これは生物学研究に興味を持つ全ての人にオススメしたい。
2021年10月6日水曜日
提出完了
科研費の申請書は今日の朝10時が締め切り。ということで、昨日の夜に最終的な校正を終えて無事提出完了した。これのおかげでこの一ヶ月ほどずーっと焦燥感があったというのもあるけど、今回自分でもかなり納得のいくものが書けたからか提出後の達成感が大きい。2本のうち1本はほぼ全編に渡って今回新しく書いたものなので結構大変だった。三週間前にあった学会のあとで、ME博士とディスカスしているうちに分担で入ってもらうというアイデアが出てきて、それから研究計画が全体的にうまくまとまる感覚を持った。この研究のフォーカスの一つになっている現象について、以前からME博士のグループでも似たような現象を違うシステムで見ているということで、前から時々この話はしていたのだけど、今回一つのプロジェクトとして自然に合体した感じ。計画を書いているだけでも結構エキサイティングだった。間違いなく重要な研究になるはずなので、何とか通って欲しいなぁ。
2021年10月3日日曜日
2021年10月2日土曜日
2021年10月1日金曜日
Invasion Hotspot 1.0
一昨日、今年の夏前に書き上げた「Invasion Hotspot」の論文を、bioRxivで公開した。bioRxivのようないわゆるプレプリントサーバを使うのは今回が初めて。夏前に書き上げたときに既に投稿準備は全て終わっていたので、今回の投稿はいくらか基本情報を入力して原稿をアップロードするだけだった。なぜこのタイミングかと言うと、こないだのJDRCで内容を発表したというのもあるけど、一番の理由は科研費の申請書で、既にこの話はちゃんと論文の形にして公開していますよ、というのを示したかったから。まぁ、そのようなことで公開しちゃったという感じなのだが、まだ追加実験も続けていて、良い実験結果が出ればもう少し改訂してからジャーナルに投稿しようと考えている。
Tumor-Cell Invasion Initiates at Invasion Hotspots, an Epithelial Tissue-Intrinsic Microenvironment. bioRxiv doi:10.1101/2021.09.28.462102.
Malignant cancers emerge in epithelial tissues through a progressive process in which a single transformed mutant cell becomes tumorigenic and invasive. Although numerous genes involved in the malignant transformation of cancer cells have been described, how tumor cells launch an invasion into the basal side of epithelial tissues remains elusive. Here, using a Drosophila wing imaginal disc epithelia, we show that genetically mosaic clones of cells mutant for a neoplastic-tumor-suppressor gene (nTSG) in combination with the oncogenic Ras (RasV12) expression initiate invasion into the basal side of the epithelial layer at specific spots in the epithelial tissue. In this "invasion hotspot", the oncogenic double-mutant cells activate c-Jun N-terminal kinase (JNK) signaling, which causes basal extrusion of the double-mutant cells and destruction of basement membrane through upregulation of a matrix metalloprotease, MMP1. Conversely, in other regions of the epithelial tissue, the double-mutant cells do not strongly activate JNK, deviate from the apical side of the epithelial layer, and show benign tumor growth in the lumen. These data indicate that the onset of tumor-cell invasion is highly dependent on the tissue-intrinsic local microenvironment. Given the conservation of genetic signaling pathways involved in this process, initiation of tumor-cell invasion from invasion hotspots in Drosophila wing imaginal epithelia could help us to understand the developmental mechanisms of invasive cancers.
10月
もう10月か。科研費の申請書に追われている間に9月が終わってしまったな。申請書の一件はほぼほぼ完成したのだが、もう一件の方はまだゴールが見えない。ということで、来週水曜日の締め切りまでまだもう少し悩まされそうなのだが、とりあえず今日の夜から三島へ一時帰国する予定。
2021年9月17日金曜日
2 weeks
ということで、なんやかんやと忙しかった今週も、結局科研費の申請書執筆に集中する時間はほとんど取ることができなかった。。。締め切りまであと二週間と少し。ほぼほぼ考えはまとまっているので、あとは書いて形にしないと。
JDRC14
さて、今週は月曜から木曜まで日本のFly Meeting、JDRC14に参加していた。まぁ参加していたと言ってもオンラインだったので、だいたい普段の生活をしながら。朝のセッションが始まる時間が結構早かったので、午前中は家から参加して、午後からはラボでデスクワークをしながら参加という感じ。オンラインのセミナーとかミーティングにはしょっちゅう出てる訳だけど、数日間行われる学会にちゃんと顔を出して参加したのはコロナ以降では初かな。しかも今回は、一日目のTumorのセッションでチェアーをやったし、うちの学生のロイが口頭発表をしたし、最終日は夜の懇親会会場にも顔を出したし、ということで結構しっかりと参加した感がある。で、やっぱり学会は楽しいという感覚を久しぶりに思い出した。色々と面白い話を聞いてインスパイアされたし、いろんな人と話せてかなり有意義だった。まぁ、やっぱりオンラインではなくて、実際に現地に集まって対面でやる方がもっと得るものが多いのは知っているのだが、本当に久しぶりに学会の楽しい雰囲気を感じることができた。
今回のJDRCは去年行われる予定だったのがコロナのせいで延期されて今年になったこともあり、本来は隔年開催なのだけど次回のJDRC15はまた来年名古屋で開催されるんだそうな。来年こそは現地開催できると良いけど。
2021年9月7日火曜日
2021年8月31日火曜日
2021年8月28日土曜日
activity
あっという間に一週間が過ぎ去った。なんか、今週は毎日忙しかったんよね。月曜日にSさんのラボに行ったのが随分前のことのようだ。今週は他にも、火曜日はUCLAのKT博士とMATLABを使った画像解析方法について教えてもらうためのミーティング、水曜日は倍数性研究グループの作戦会議があって、そのあと北大のSI博士と原子間力顕微鏡を使った観察に関してディスカス、そして金曜日は学内ファンドの二次審査のためのトーク、ということでラボ外の人とのミーティングが多かった。最近にわかに自分のソーシャルアクティビティが戻ってきた感じがある。ようやく自分がこのウィズコロナ時代のオンラインアクティビティに慣れてきたというのもあるけど、自分のグループの研究が進み始めているというのが大きいかな。
2021年8月18日水曜日
2021年8月17日火曜日
2021年8月15日日曜日
2021年8月14日土曜日
2021年8月8日日曜日
2021年8月6日金曜日
Glittering wing
今週はちょっとwing discでGCaMPを使ってカルシウムイメージング。egg chamberでのGCaMPはエピの顕微鏡でも結構綺麗に撮れていたのだけど、wing discはあまりクリアーなシグナルが得られなかったので、今日 S に手伝ってもらってライブイメージング用のコンフォーカルを使って撮ってみたら調子良くピカピカ光っていた。で、撮り始めてすぐ、興味深いパターンが出ている可能性に二人とも気が付いた。
2021年7月28日水曜日
scrib vs. scrib-Ras
この写真は結局Main Figureに入らなかったのだけど、なかなかビューティフルにdouble mutant cloneのphenotypeを示している。上のパネルはGFPのみのmosaic cloneで、下のパネルはRasV12-overexpressing mosaic clone。どちらもscrib hypomorphic mutant alleleを組み合わせたtrans-heterozygous backgroundのwing imaginal disc。GFPだけのcontrol cloneはpopulationの割合にあまり変化が見られないのに対し、Ras mutant cloneは日を追って広がっていくのがよく分かる。
Sequential oncogenic mutations influence cell competition
バルジのscrib-Ras double mutantに関する論文が、昨日ついにオンラインで公開された。以下のリンクから入ると、9月14日まではフリーでアクセスできるらしい。
Sequential oncogenic mutations influence cell competition. Current Biology 10.1016/j.cub.2021.06.064
At the initial stage of carcinogenesis, newly emerging transformed cells are often eliminated from epithelial layers via cell competition with the surrounding normal cells. For instance, when surrounded by normal cells, oncoprotein RasV12-transformed cells are extruded into the apical lumen of epithelia. During cancer development, multiple oncogenic mutations accumulate within epithelial tissues. However, it remains elusive whether and how cell competition is also involved in this process. In this study, using a mammalian cell culture model system, we have investigated what happens upon the consecutive mutations of Ras and tumor suppressor protein Scribble. When Ras mutation occurs under the Scribble-knockdown background, apical extrusion of Scribble/Ras double-mutant cells is strongly diminished. In addition, at the boundary with Scribble/Ras cells, Scribble-knockdown cells frequently undergo apoptosis and are actively engulfed by the neighboring Scribble/Ras cells. The comparable apoptosis and engulfment phenotypes are also observed in Drosophila epithelial tissues between Scribble/Ras double-mutant and Scribble single-mutant cells. Furthermore, mitochondrial membrane potential is enhanced in Scribble/Ras cells, causing the increased mitochondrial reactive oxygen species (ROS). Suppression of mitochondrial membrane potential or ROS production diminishes apoptosis and engulfment of the surrounding Scribble-knockdown cells, indicating that mitochondrial metabolism plays a key role in the competitive interaction between double- and single-mutant cells. Moreover, mTOR (mechanistic target of rapamycin kinase) acts downstream of these processes. These results imply that sequential oncogenic mutations can profoundly influence cell competition, a transition from loser to winner. Further studies would open new avenues for cell competition-based cancer treatment, thereby blocking clonal expansion of more malignant populations within tumors.
この論文の元になるデータをYさんから見せてもらって共同研究の話を始めたのは、たぶん4年ほど前になるのかな。当時自分はまだ遺伝研にいたのだけど、北大で開催された細胞競合の国際シンポジウムに出席した時に、クラーク会館の食堂でYさんと昼御飯を食べながらこれについてディスカスしたのを覚えている。あの時は、まさかその後Yさんと一緒に北大から京大へ移動しながらこのプロジェクトを完成させることになるとは思いもよらなかった。この4年間で3人の学生がバトンタッチで完成させた仕事なのだけど、やはりこれは博士課程の仕事としてメインで関わったバルジの論文だ。そして、実は自分とYさん2人で初のココレスポの論文ということにもなる。
話の内容はアブストにある通りだけど、簡単に言うと、scrib mutantの細胞群の中に、さらにRas mutationが追加されたscrib-Ras double mutantの細胞が出現すると、そのdouble mutant cellが周りのscrib mutant cellsを殺したり食ったりしながらoutcompeteしていくという話。哺乳類培養細胞とショウジョウバエのimaginal discの両方で同じ現象を確認することができた。scrib mutantとRas mutant、各々どちらもnormal cellに囲まれた状態ではloserとして上皮層から排除されるのだが、はじめにscrib mutant backgroundがある状態でRasが入ると、scrib-Ras double mutantがsuper-competitorとなって周りの細胞をoutcompeteしながら侵食していく。一方、mutationの順番が逆の状況、つまりscrib-Ras double mutantがRas mutant cellに囲まれた状況では、このようなapoptosisやengulfmentといったcell competition phenotypesは見られない。つまり、がんの初期段階において、変異の蓄積によって生まれた悪性細胞と周囲の前がん細胞とのcell competitionによって、がん組織の細胞集団の性格が変わっていく、そしてそこでは蓄積する変異の順番が重要なのだろうというお話。
2021年7月23日金曜日
開会式
昨日からwing discでのsensory organ precursorsに関するシグナリングを調べているのだが、やはりこれは結構複雑やね。組織内にぽつぽつとランダムに散らばっているように見えて、ちゃんと各々の配置が調節されている。まぁ、ウチらが見ているものにこれが関係しているかどうかについては、実際の遺伝子発現パターンを自分の目で見てみないとなんとも言えないけど。
さぁ、今晩はついに東京オリンピックの開会式か。ほんまにできるんかいなみたいなことをずーっと話していたけど、いよいよ楽しみになってきたね。ということで、そろそろ帰ろう。
四連休
四連休、とりあえず前半は二日とも午後からラボに来てだらだらとデスクワーク。さすがにこう暑いとなかなか出かける気もならないのだが、家にいても昼間は暑いし、明日はちょっと遠くまでドライブする予定を立てている。
部屋にいるメタリカがうちに来てほんの二週間ほどで少し成長したような気がする。
2021年7月22日木曜日
2021年7月19日月曜日
3rd day
ワクチンセカンドショットから今日で三日目。昨日は午後から頭痛がひどくなってきて、夕方には熱が出ている自覚があったので、バファリンを飲んだら一応落ち着いた。今朝、もう熱は下がっていたけどまだなんとなく倦怠感もあったので、今日は一日自宅でテレワーク。この機会に先延ばしにしていた論文の査読に集中する。この論文はNAS memberによるPNASへのContributed articleというやつなので、基本的にはアクセプトするためにあまりきついメジャーコメントは無しという方向でのレビュー。実はこの論文の内容は、以前にミーティングで聞かせてもらったことがある話で、結構自分が見ているものと関係があってなかなか興味深い点が多いのだが、なんともえらい適当に書き上げたなぁという印象。なんか理由があって急いでいるのかも知れない。
そういや今週は木曜から四連休やね。
2021年7月18日日曜日
2nd day
ワクチンのセカンドショットを受けて二日目。打ったほうの腕の筋肉痛は1回目よりひどい。朝から結構倦怠感があって、午後になってだんだん悪寒がして頭痛もひどくなってきた。やっぱり2回目の副反応は1回目よりだいぶきついね。昨日車検で預けた車を午後に取りに行ったあとは、家でゆっくり大相撲を観戦。うーむ、それにしても千秋楽の一番、あれはちょっと納得いかんなぁ。
2021年7月17日土曜日
2021年7月16日金曜日
hearing
今週は、月曜日に先進ゲノム支援のヒアリングがあったので、これまで考えていたsingle-cell RNA-seqについて真剣に考える良い機会になった。具体的には、mosaic wing discの細胞をバラバラにして、そこからGFP陽性のmutant cloneだけを単離して、それら一細胞ずつに対するRNA-seqを行うという実験になる。一つ一つクオリティの高い生細胞を1万個単離してくるには、各ステップで検討しないといけないことが色々とある。ということで、今週何人かその筋のエキスパートの方々と話すことができて、いくらか試すべきものが見えてきた。
2021年7月13日火曜日
2021年7月12日月曜日
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