2025年12月8日月曜日

ACB25

ついに今週で秋学期の授業が終了する。今週は期末試験だけど、自分が教えているコースでは先週すでにレポートを課したので、あとは今週末にレポートの採点をしてグレードをつけるのみ。この15週間で合計25回の講義をして、生徒達は13本の論文を読んで毎週プレゼン&ディスカスをした。という数だけを見ても結構よくやったなぁと思うのだが、それ以上に今回のコースは自分にとってとても意味のあるものになった。
今回のコースタイトルは「Avanced Cell Biology」ということで、まぁどこの大学にでもありそうなものだけど、一般的な細胞生物学の教科書を読み進めていくような退屈な授業にはしたくなかった。そんなわけで、完全にオリジナルの新しいコースを作ろうと決めたものの、日本の大学でもこういうコースを担当したことがなかった自分にとってはかなりチャレンジングで準備が大変だった。単細胞生物と多細胞体制の違いについて話していた始めの数週間は特に大変だったのだけど、その後、germline specification、stem cells、cell competitionと進んでいったあたりから、ちょっと不思議な気分になってきた。始める前にシラバスを書いていた時点で、コース全体を通して一つの大きなストーリーになるようなイメージは持っていたのだけど、自分がこれまで20年以上に渡って取り組んできた色々な研究が、全てそのストーリーの一部としてぴったりはまっていくというような感覚。これまで自分の中では、それほど意識せずに行き当たりばったりで色々な研究をやってきたようなイメージを持っていたのだけど、実は知らず知らずのうちに一貫した興味を持ってやってきたことに気付かされた。つまり、授業という形で一つのストーリーを組み立てていく中で、自分が研究者として追い求めてきた「細胞の社会性とは何か?」というような大きな問いが見えてきた。大学のコースを作っていくことで自分の研究のコンセプトを再発見することになろうとはね。
アメリカの大学の先生は、結構こういう独自のcourse developmentをやる訳だけども、これは確かにものすごく勉強になる上に、改めて自分の研究を見直すことにもなる。そして、新しい独自のコースができると、それはかなり分量のある大きな物語になる訳で、本を書きたくなるんだろうなというのが分かってきた。

2025年11月27日木曜日

11.27.25

今日はサンクスギビングでもあり自分の誕生日でもあり、ということでちょっと特別な日の気分があったけど、午後はやっぱりラボでフライプッシング。まぁ当たり前だけど、今日は大学のキャンパスには全く人気がなく、研究棟にも誰もいない。窓から見える夕日で赤く染まっていく町を横目に、ハエ達の掛け合わせを作ったり、スクリーニング中のハエ達のフェノタイプをゆっくり観察したりする時間は、なんとも贅沢な時間に感じる。

三度目?

先週、うちの子からもらった風邪は、週末に症状がひどくなってきて二日間ほど熱が出たり鼻詰まりがひどくて頭痛がしたりして、その後ひどい咳があったけど昨日から症状がすっと治ってだいぶ回復した。月曜日は薬を飲んで、朝の授業と午後の実習をなんとかやり終えたのだけど、その後かなりしんどかったので、水曜の講義は休講にした。で、症状が治ったときにふと、これってもしかしてコロナなのでは?と思った。これまですでに二度経験しているけど、数日で次々と諸症状が現れてひどい咳が残るというプロセスがかなり似ている気がする。最近また流行っているらしいし、今回はちゃんと検査しなかったけど、おそらくそうなんだろう。しかし、もしそうだとしたら、実習で何人かの生徒にうつしてしまったかも知れないな。。。
まぁでも実は、今日から週末にかけてこちらはサンクスギビングホリデーなので、少しゆっくりできるのでした。

2025年11月23日日曜日

九州場所

安青錦、おもしろい力士が出てきたなぁという印象だったけど、この一年でここまで来るとはねぇ。順調にいけば来年綱取りまでいくかも知れないね。今年は新横綱が二人も出てきたし、他にもまた注目の若手が出てきて面白くなってきた。そんなこんなで今年の大相撲もこれで終わり。今年の初めこちらに来てすぐの頃、まだ何もない部屋で初場所を見ていたのが印象的で、それ以来二ヶ月おきに大相撲を見るたび、あぁまた二ヶ月経ったんだなぁと思っていたけど、いつの間にか今年もそろそろ終わりということか。長かった秋学期も残りあと三週間。といっても今年中にやらないといけないことはまだまだある。

2025年11月15日土曜日

SMZ25

先週の数日間、Nikonのハイエンド蛍光実体顕微鏡SMZ25のデモ機を借りていた。この夏に日本から送ったNikonの蛍光顕微鏡のセットアップを頼んだ時に、こちらのNikonの担当者と色々と研究のことを話していて、ハエの全身のtumor metastasisを見るのにSMZ25が適しているかもと思いついた。実際に使ってみた感じ、実体顕微鏡としての解像度はすごい。2倍の対物レンズを使うと、wing discもここまでしっかり見える。しかも実体だから当たり前だけど、大した準備をしなくても容易にライブイメージングができる。実は日本にいた時にも見積もりをしてもらったことがあったので、なんとなく価格の感覚はあったのだが、こちらのNikonから出してもらった価格はびっくりするくらい高かった。やっぱり舶来の輸入品で関税もかかってだいぶ高くなるのか。予想していた2倍くらい。さぁ、どうするかねぇ。

運転講習

ルイジアナ州は運転免許取得のハードルが高い。色々と調べていたら、新規取得には6時間の授業と8時間の運転講習を受けないといけないとかいうことで、これまでは忙しくてそんな時間は取れるはずもないと思っていた。以前のフロリダでの運転記録があればそれらの講習は免除されるかもしれないとかいう情報を得て、フロリダのDMV(陸運局みたいなとこ)に問い合わせたりもしてみたけど、10年以上前の記録は残っていないとか。しかし、国際免許の期限も切れてしまったし、これはもう講習を受けて取るしかないか、ということで地元の自動車学校に登録をして先週の土曜日に講習を受けて来た。朝から6時間の講習を受けてから、午後に早速筆記試験を受けるという一日詰め込み型。事前に少し予習もしていたので全問正解でパス。そして、今週は火曜と木曜の朝に2時間ずつ運転講習を受けてきた。火曜日のインストラクターは、なんとこの春にうちのBiology Departmentを卒業したばかりの若者で、木曜日はおじいちゃんだった。考えてみれば、自分はもう30年以上も運転していて、そのうち10年くらいはアメリカで運転しているので、どちらのインストラクターも、じゃあ大して教えることなんてないやんとなって、どちらの日も2時間お互いの身の上話をしながらぶらぶら郊外をドライブするというのんびりした時間を過ごした。今さら運転の仕方を8時間も習う意味がないので本当に面倒くさいと思っていたけど、まぁたまにはこんなのんびりした時間を持つのもいいかなと思った。再来週にまだあと2回あるけど。

2025年11月7日金曜日

決め手

月曜日、福井大学に里子に出しているロイのプログレスオンラインミーティングを実施。ロイから直接話を聞くのは、9月初旬にこちらに来ていたとき以来だから2ヶ月ぶり。ロイはもう随分長いことtumor cloneでのchromatin modificationを見ていて、phenotypeはかなりクリアなのになかなかこれという進展がなかったのだけど、今回ついにもしかしたらこれはいけるかも、というものが出てきた。簡単に言うと、彼が注目しているchromatin modificationのヘテロなパターンと、ある遺伝子の発現レベルがかなり一致しているという発見だった。そういやつい最近その遺伝子の名前をどこかで聞いたような、と思って考えていたら、授業で取り上げた論文に出てきたんだった。ロイは来年D3で、時期的にはもうそろそろ学位のことを考えなければいけないのだけど、もしこの遺伝子が機能的に関与しているのであれば、学位論文の決め手になるかもしれない。彼がここからどれくらいプッシュできるかにかかっている。

2025年11月1日土曜日

Fly Kitchen

そして火曜日、ついにここのラボで初めてフライキッチンを稼働させて、学生達と一緒にハエのエサ作りをした。日本で作っていたエサのレシピを踏襲するか、アメリカで一般的なBloomingtonレシピとかMolassesフードに変えるか、ずっと考えていたのだけど、結局Bloomingtonレシピでいくことにした。考えてみれば、この数ヶ月間すでに業者から購入した出来合いのアメリカンフードを使っていたし、普段ウチで見ているtumor phenotypeに特に差は見られなかった。日本で使っていた自動餡練り機の大きな鍋はこちらに持って来ることができなかったので、調理器具はこちらで新しく購入したIHヒーター、寸胴鍋、そしてオーバーヘッドスターラーという感じ。しかも新しいレシピということで、試行錯誤しながらのクッキングだったこともあり少し焦がしてしまったけど、まぁまぁそれなりのものができた。意外にも地元出身の学部生のLBが、これはこの地方の郷土料理ガンボの作り方と一緒だね、とか言いながら慣れた手つきで参加してくれたのはありがたかった。ともあれ、これでついにラボの基本設備が全て稼働し始めたことになるかな。

Necrosensor

今週もいろんなことがあって疲れたけど、いくつか新しい進展があった。まず月曜日の実習では、SKY博士のラボが開発したネクロシス検出のためのハエ、Necrosensorを使った実験をした。午後からの実習のために朝一番にヒートショックをかけて細胞死を誘導したつもりだったのだけど、意外とあんまり細胞死が起こっていなくてちょっとがっかり。最近ラボで同様の実験をしている J と話したら、どうやらヒートショックの温度がちょっとマイルドだったのではないかと。そんなわけで、翌日さらにもう少し温度を上げてヒートショックをかけてみたら、影響がだいぶクリアになった。そして、なぜか幼虫の体の特定の部分で大規模な細胞死が引き起こされていて面白いので、これはもうちょっと詳しく見てみるかなという気になってきた。
ちなみにNecrosensorはnegative signalによる検出だけど、シグナルはかなりクリアーで効果的。さすがSKY博士、ええ仕事してますなぁ。

2025年10月21日火曜日

ACB後半戦

オフィスの窓からの景色も、どことなく秋らしくなってきた気がする。このところの授業は、cell competition、tissue homeostasis、apoptosis-induced compensatory proliferation、organ size controlとか、自分にとって一番馴染みのある専門のトピックが続いているので、少しの準備で自由にしゃべっている感じ。このコースもいよいよ後半に入ってきていて、ここまでかなり良い流れで来ていると思うのだけど、学生達が何らかのコンセプトに辿り着くために重要なのはここから。終盤までの流れをもう一度しっかり考えてみたい。のだが、Midterm examの結果はいつ出るんですか、みたいな問い合わせが数人から来ているので、まずは何らかの点数を出して安心させてあげるべきなんかねぇ。

The arrival of autumn

ここ数日、ずいぶんと朝晩の気温が下がるようになって、朝の自転車での通勤時に手袋をするようになった。といっても、昼間はまだ30度まで上がるので、服装がなかなか難しかったり。そのような中、街はだんだんとHalloweenの雰囲気が高まってきている。アメリカ人はほんとハロウィンが好きだねぇ。