今日の午後は、今期一回だけ担当になっていた大学院の授業。Developmental Biology III というコースで、一回の講義につき発生生物学のコンセプトを一つ、一本の論文の内容を元にして学ぶというもの。3年前にも一度同じ授業を担当して、その時は「Organ Growth Control」というトピックでcell competitionの話をしたのだった。で、今回自分が選んだトピックは「Aging」。実際には三つのトピックを提案したのだけど、オーガナイザーのS先生が選んでくれたのがAgingだった。と言っても自分は全くもってAgingのエキスパートではないし、ただ研究の流れで老化に興味を持ち始めたという感じだったので、Agingで、と頼まれた時はちょっと焦った。で、この授業用に選んだ論文はDr. CKによる1993年の以下の論文。
A C. elegans mutant that lives twice as long as wild type. Nature 366: 461–464.
We have found that mutations in the gene daf-2 can cause fertile, active, adult Caenorhabditis elegans hermaphrodites to live more than twice as long as wild type. This lifespan extension, the largest yet reported in any organism, requires the activity of a second gene, daf-16. Both genes also regulate formation of the dauer larva, a developmentally arrested larval form that is induced by crowding and starvation and is very long-lived. Our findings raise the possibility that the longevity of the dauer is not simply a consequence of its arrested growth, but instead results from a regulated lifespan extension mechanism that can be uncoupled from other aspects of dauer formation. daf-2 and daf-16 provide entry points into understanding how lifespan can be extended.
この論文、もうすでに25年前のものということもあるけど、内容はものすごいシンプル。基本的には、daf-2 mutantがwild typeに比べて倍ほど長い間元気に長生きする、ということと、daf-16 mutationがこのdaf-2のlong-lived phenotypeをレスキューする、というかwild typeと同程度まで戻してしまうという、つまりはlifespanに対する二つの遺伝子のgenetic interactionを示しているだけ。しかしながら、当時まだ老化のメカニズムを真剣に研究していた人はほとんどおらず、Dr. CKの言葉を借りれば「a hopelessly intractable, even futile, problem to study.」だった。老化というものは「We just wear out; that's it.」という訳だ。それまでにも、wild typeに比べて寿命が長いmutantは報告されてはいたのだけど、この論文は初めて「lifespanはgenetic signaling pathwayによって制御されている」という新しいコンセプトを示したのであり、aging researchにおける一つのマイルストーンと言うことができるだろう。ちょっと面白いのは、こういう時代背景もあったからか、当時このaging projectに興味を持つ学生はほとんどおらず、結局この論文の著者はDr. CK以外、全員彼女のラボに短期間だけ在籍したローテーションの大学院生なのだそうな。
2018年1月15日月曜日
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