2012年2月26日日曜日

hsFLP

ちょっと「hsFLP」について。いわゆるヒーショッフリップ(heat shock flipase)。正確には、FLP recombinase under the control of a heat shock-inducible Hsp70 promoter かな。ハエでmosaic analysisをしている人なら毎日当たり前のように使っていて、当然X chromosomeにのってるやん、とか思い込んでかけ合わせて次世代にヒートショックかけて解剖してみたらモザイク入ってなくて、うわぁコイツらhsFLP持ってないやんけっていうことがあるくらい。ってそんな人はおらんかな。自分は何回かやったことあるけど。さて、ここ最近随分とflip-out Gal4を使ってfollicleにいろんなタイプのoverexpression cloneを作り出しているのだが、どうもいくつかのクロスでflip-outが起こりすぎている、というかほぼ全ての細胞でflip-outが起こって組織全体がGFPで真っ緑になっているのである。heat shockは37℃30分。follicleでのflip-out cloneなら大体30分のadult heat shockでイイ感じのモザイクが得られるはずなのだが(もちろんクローンの種類にもよるけど)、こんな風に全部の細胞でフリップアウトされると非常に困るのである。だってモザイクにしたいからflip-out cassetteを使っている訳で、全ての細胞で発現のタイミングだけコントロールしたいんやったらGal80ts使うっちゅーねんゆー話やでこれが。
実はある特定のhsFLPがfollicleでこの現象を示すことはもうだいぶ前から知っていたのだけれど、今回久しぶりに大事なとこでやられて悲しくなったのでした。まぁやられたと言っても以前にこのhsFLPをいくつかのUAS lineに仕組んでおいたのは自分なんやけど。

さて、Ashburnerの「Drosophila」によれば、過去に少なくとも3種類のhsFLP constructが作られているようだ。以下、各々のconstructに対する記述の一部を抜粋。

P{hsFLP} (Golic and Lindquist 1989)
In some chromosomal locations, this gene is highly inducible, e.g., the insertion P{hsFLP} l(2)2B[2B] on chromosome 2.  In other locations, it is inducible to a lower level, e.g., P{hsFLP}1 on the X chromosome.  Transgenes may also exhibit substantial constitutive expression, and this may vary from tissue to tissue.

P{70FLP} (Golic et al. 1997)
It typically shows significantly higher induced activity than P{hsFLP}.  P{70FLP} insertions also usually exhibit significant noninduced expression, at least in the eye.  Judging only from the size of resulting clones, most of this uninduced expression appears to occur early in development, either in embryos or in first-instar larvae.  One particular insertion of this construct, P{70FLP}10, exhibits constitutive activity in the soma and can be used to generate mosaics without the use of a heat shock.

P{hsp70-flp} (Struhl and Basler 1993)
This construct is also quite effective.

mitotic recombinationによるFLP-FRT mosaic cloneの場合のrecombination rateはFRTのサイトにも依存することはよく知られている事実だけども、flip-out cassetteにおけるcis-excisionの確率は、cassetteの種類やそのinsertion siteよりもhsFLPの種類による影響が大きい気がする。もちろん同じhsFLP constructでinsertion siteが違うことに起因する可能性もあるのだけど。そういえばある種のflip-out cassetteがfollicleに限らずモレモレなのも見たことがあるけど、あれはhsFLPのnoninduced expressionのせいなのか。
で、この記述だけを見ていると、普段使っているのはP{hsFLP}で、この真っ緑のfollicleを作ってくれるハエは代わりにP{70FLP}を持ってんのかなぁという気がする。まぁいずれにしてもhsFLPを変えてやり直さなあかんかも。。。

5 件のコメント:

  1. ハエ初心者の僕には、大変勉強になります!素人質問なんですが、こういうのって、温度下げたり、時間を短くしても、やっぱり全部の細胞でおこってしまうのですか。魚では、ER-Creが最近よく使われだしているのですが、tamoxifenの濃度によって、モザイク度を変えたりしています。

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  2. 低い温度は試したことないですけど、ハエのFLP-FRTシステムも基本的にhsFLPを用いたモザイククローンの割合はheat shockの時間である程度コントロールできます。しかしながら今回のようなhsFLPの場合、どうやら時間を短くしても全体的にflip-outが起こってしまっているので、これは恐らくfollicle stem cellかproliferationの早い段階でFLPのnoninduced expressionが起こってしまってるんかな、と思います。
    flip-out Gal4 mosaic overexpression cloneで、こういうnoninduced expressionを避けてきっちりとoverexpressionのタイミングをコントロールしたい場合は、今のところ AyGal4:PR cassette を用いた Gene-Switch system がベストかなぁ。このシステムは結構レスポンスが早いし、ある程度overexpressionの発現量自体もdose-dependentにコントロールできます。

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  3. なるほど。ゼブラでもhsp70のヒートショックプロモーターはかなりもれることが知られています。なので、ER-Creが流行りつつあって。ハエでも、progesteroneとかで調節できるんですね。エサに混ぜたりとかが大分やっかいそうだけれど。そういう点で、魚は水の中にいるので、薬剤処理が非常に簡単で、それが一番の利点ですね。まぁ、ジェネティックスはハエの方が大分進んでいますが。今週から僕もいよいよハエスタートです!

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  4. ハエもウジ虫達はエサの中を泳いでいるようなもんなので、薬剤をエサに混ぜるのは似たような感覚かも知れませんよ。
    あれ、もしかしてもうCaliforniaですか?それとも移動中でしょうか。無事に予定通りCaliforniaに到着できるのか、最近ずっとドキドキハラハラしながらブログ見てました。最後の一ヶ月くらいはなんやらすごそうでしたよね。自分もPhD取得後すぐに渡米だったので同じようなhectic daysを思い出していました。

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  5. ハエウジ虫も「エサの中を泳いでいるような」感じなんですね。なるほど。それなら、ハエでも薬剤処理とか結構できそうですよね。

    やっと、カリフォルニアに到着しました。何とか中西部を脱出できました。hectic lifeは、僕のラストミニッツな性格によるものです。本当は、もっとゆったりしたいのですが、目の前に何か可能性があるとすぐに追っかけてしまい、自分を必要以上に忙しくしてしまうのです。

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