2012年8月9日木曜日

Drosophila synthetica

少し前に、PLOS Blogsというサイトで「What is a species?」という記事を見た。PLoS ONEに出てきたある論文についての記事なのだが、よく見るとその論文の著者はあのモレノ先輩ではないですか。Drosophila syntheticaという新しい“種”('synthetic species'=合成種?)を作ったんだと。そういえば前回のFly Meetingのアブスト集を眺めていた時になんやらオモロイこと始めよったな、と思ったことを思い出した。この記事でも論じられているように、ポイントは“speciation”に対する議論の投げかけな訳なのだが、そんな小難しいことよりもこのDrosophila syntheticaを作り出したそのアイデアがなかなかオモシロイ。で、そのDrosophila syntheticaのgenotypeは以下の通り(もちろんこれはDrosophila meranogasterなんだけど)。

GMR-Gal4/GMR-Gal4; UAS-RasV12, gl[60J]/UAS-RasV12, gl[60J]

え、なんでこのmutant flyが新種になるの?と思ってしまうのだけど、理論的にはこのmutant fly lineとwild-type間には生殖的隔離が起こってしまう。つまり、GMR>RasV12はlethal phenotypeになるのだが、このmutant flyはGMR-Gal4をオンにするtranscription factorであるglassのhomozygous mutant(gl[60J]/gl[60J])になっているためにGal4の発現が起こらないのである。がしかし、このハエがwild-typeのハエと交雑すると次世代の全ての個体でこのglass mutant alleleがheterozygousになるために、GMR>RasV12がオンになって全滅するというトリック。この遊び心は感心するわ。

In summary, the synthetic species boundary described here can be reliably and predictably manipulated, allowing opening and closing speciation gates when desired, and isolates for the first time a transgenic animal from the original wild-type population. (PLoS ONE  7: e39054.)

4 件のコメント:

  1. この論文は知らなかったんですが、なかなか面白いですね。テクニックも面白いけれど、主張も面白いと思いました。初めは、「モノは言いようなだけやん」と思ったんですが、間違いなくモレノ先輩は確信犯的にこういうことを主張してそうな感じで、論文を読み終わった後は、「speciesとは」と考えさせられました。

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  2. そうなんですよねぇ。ここに載せた、この新種のmutationがどのようにして蓄積して種分化が起きたかということを示したfigureはちょっとふざけとるように見えるのですが、、、モレノ先輩の笑う顔が思い浮かびますわ。

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  3. これ、面白いですね。
    生物多様性の講義で、「生物学的種概念」とかやっているので、使わせて貰いますw

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  4. お、いいですねぇ。学生達をがっつり悩ませてあげて下さい。

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