2012年8月2日木曜日

クラムス

Differences in levels of the transmembrane protein Crumbs can influence cell survival at clonal boundaries.  Dev. Biol.  368: 358−369.

昨日のジャーナルクラブで発表した論文だけども、うーむ困ったなぁ、というのが正直な感想。いわゆるcell competitionをCrumbsで説明しようとした論文。いや、言わんとしているmolecular mechanismはかなり面白いのだけども、どうもいくつかの矛盾点が結論を見えにくくしている、というかあっさりと納得することが出来ないので発表するのに困った。まぁ、Discussionを読むと著者らが解釈に苦しんだことはよく分かるのだけど。
まぁでも簡単に言ってしまうと、
Here we examined tissues where groups of cells with different Crb levels were juxtaposed and observed high levels of cell death, specifically near the boundaries between the two populations.  Based on the requirement of the ECD in these effects and indications that Crb molecules may interact across cell junctions, we propose that Crb itself could function as a comparison factor to directly regulate cell survival nonautonomously.
ということなのである。
つまり、transmembrane proteinであるCrumbs (Crb) はその長いECD (extracellular domain) を介して細胞間のCrb同士でhomophilicに結合している、と考えた上で、隣り合う細胞間でCrbのexpression levelに差が生じた場合、これらの細胞間で結合できないCrbが結合出来る側の隣接細胞間境界膜上に移動してしまうことによって、細胞内でCrbのplanarなasymmetric intracellular distributionが形成されてしまう。このCrbのasymmetric distributionが、他のCrb-binding moleculeのasymmetric distribution(例えば、membrane-associated pro-apoptotic proteinのlocal concentration)をも引き起こしてしまうことによってapoptosis pathwayを刺激してしまうんじゃないかなぁ、と。
実は論文を読む前にこの仮説を説明するFigure 5のマンガを眺めていて「おっ、これはもしかして」と思ったのだが。ちなみに、隣接細胞間におけるCrb発現レベルの差異によって誘導されるnonautonomous cell deathは「an example, albeit atypical, of cell competition」である、と言っている通り、Minute cloneやdMyc overexpressionのcompetitive mosaic situationではCrbの発現に差が見られない。Crbの場合、wing discのA-P compartment boundaryをまたいでcompetitionが起こることとかもそうだけど、やっぱりcell competitionにおいて勝ち負けを決定する仕組みっていうのは結構mutant cellの性格によってまちまちなんかもなぁ、という感じがする。
それにしても、crb mutant cloneとwild-type cellのclonal boundaryで、wild-type cellのendogenous Crb(ちなみにExpandedも)がmutant cloneと接している境界膜上から消失するphenotypeはクリアーやねぇ。まぁこれは以前の論文でも示されているのだけど。この論文ではCrb-ECD overexpressing cloneにおいても同様に、wild-type cellとの境界の両側の細胞においてCrbとExのplanar asymmetric distributionが誘導されることが示されているのだが、このCrb-ECD overexpression cloneはcell competitionを誘導しないんですなぁ。難しいね。

4 件のコメント:

  1. インサイダー情報ですが、この論文は、ファーストの学生が卒業した大分あとに投稿されて、色々苦労したみたいです。developmentでリジェクトのあと、DBにアクセプトとなりました。既にラボでは「過去の遺産」的な扱いです。。。最近、ラボからの論文は一発屋的な単発ばっかりなのが、たぶん僕らのラボの課題だと思っています。多くの遺伝学のラボがそんな感じなのかもしれませんが。

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  2. お疲れさまです、インサイダー情報ありがとうございます。syoo4sさんのコメントを待っていました。なるほどねぇ、既に過去の遺産ですか。。。でもこの仮説をCrbだけじゃなしに、他の似たようなmoleculeにも当てはめて考えてみたら結構面白いものが出てきそうな気がするんですけどねぇ。

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  3. 実は、僕はこの論文をきっちり読んでいないのです。。。恥ずかしながら。何だか面白そうな気がしてきたので、時間がある時に読んでみます!

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  4. あ、いや、でもここだけの話、そんな期待して読んだらがっかりするかも知れませんよ。。。(私は結構期待して読んでしまったので。。。)

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