2012年10月6日土曜日

起承転結

ドンちゃんがようやく論文を書き始めたようだ。彼のこの研究は、実は自分が持っていてお蔵入りになりそうだったいくつかの古いデータをあげたことから始まった。あげたのはもう二年ぐらい前になるのかな。で、Resultsを大体書き終えたのだけども、どうも最後のセクションがうまく書けないのでちょっと見て欲しい、ということで昨日の夕方その原稿を前に色々と話し合った。確かに、論文の構成上最後にくる実験結果がどうも曖昧な感じで結論がスッキリとしない。でもこの実験結果についてはドンちゃんももう長いことその解釈を考えに考えた上で答えが出せなかったものなので、たぶん今現在あるデータだけで説明するのは不可能なのだ。genetic pathwayなんて普通そんなシンプルなものではないし、ここでは他にも別のpathwayが関わっているのだろうとしか言いようがない。じゃあ、どうすればいいの?と悲壮な顔で聞いてくるドンちゃんに、じゃあこの際がらっと論文の構成を変えてみてはどうだろうかと提案した。実は前半のデータは結構ソリッドなので、このソリッドなデータを論文の締めに持ってくれば論文の印象が随分違ってくるんじゃないかと。普通、論文をある程度まで書き上げてしまうと、自分の中ではこの話の流れが最適であって話の順番を入れ替えるのは不可能のように思えるし、第一入れ替えてみようというアイデアは自分からはあまり生まれてこないものだと思う。でもやっぱり曖昧なデータを締めに持ってくると、どうしても論文の印象自体が悪くなる。「起承転結」という言葉があるけども、科学論文においてもやっぱり起承転結のあるストーリーは読んでいて楽しい。科学論文に起承転結が必要であるとは別に思わないけども、物語と同じで結末が納得いかないものだと、なんだかなぁと思ってしまうものだ。物語の場合は起承転結の順番を入れ替えることはほぼ不可能だけども、科学論文では場合によってはこれが可能だったりする。もちろん「起結転承」とかにしてしまうのではなくて、並べ替えたものを起承転結に書き直す。ストーリーを再構成して論文の核となるソリッドなデータを結末に持ってくることで、全体的な印象は随分変わってくるはず。なんていう話をしているうちに、ボケーっと聞いていたドンちゃんの表情がみるみる変わっていった。確かにその通りだ。それは可能かもしれない。と言って興奮して帰っていった。さてどうなるものやら。

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