2014年7月17日木曜日

extrusion

ちょっと待てよ、extrusionエクストルージョンって言うけど、これってどうなん?と以下の論文を読みながら考えていた。

Tumour cell invasion: an emerging role for basal epithelial cell extrusion.  Nature Reviews Cancer 14, 495–501.

この論文では、普段(mammalの上皮組織では)apical側にextrudeされて除去されるtransformed cellが、basal extrusionによってunderlying stromaに侵入して匿われることによってmetastasisが起こるのであろう、としてそのメカニズムに関して自分達のいくつかの報告を基にした仮説をなんやかんやと話している。自分が見ている細胞達も上皮層からニュルッと出てしまうのだけども、コイツらのビヘイビヤーはmetastasisとはまた違う局面のお話。
さて、「basal extrusion」とかいう表現をした場合、「extrude」っていうのはそもそも他動詞なので、基本的にはneighboring wild-type cellsによって起こされる(押し出される)受動的な現象という意味合いが強くなる。そうやって考えると、もしかしたら今自分が見ている細胞達のビヘイビヤーを「extrusion」と表現するのはちょっと正しくない気がしてきた。
例えば、YN博士のNature論文では、spindle misorientationによって細胞が基底膜側へ抜ける現象を「delamination」と表現している。ここで上皮層から脱落していく細胞達は、nub-Gal4によってwing pouch上の細胞みんながscribなんかをノックダウンされている、つまりhomogeneousな状況にあり、細胞分裂時にspindle misorientationによってjunctional architectureに異常が発生したヤツがbasal側へ落ちていくという風に説明されている。つまり、この現象は隣接細胞によってnon-cell autonomousに引き起こされるcell competitionとは異なる、どちらかというとcell autonomousな現象と考えられる。まぁもちろん周囲の細胞達がこのdelaminationをなんらかの形で促している可能性もあるだろうとは思うけど。
ということで、コレと同様なものを見ているのだとしたらやっぱり「delamination」と言うべきなんかな。

6 件のコメント:

  1. extrusionという表現、私も論文の初回投稿時までは使っていました。で、一番厳しかったレビューアーから「extrusionの証拠どこやん?(その単語使うなコラ、くらいの勢い)」を言われてしまったので、結果的に全部delaminationに書き換えた経緯があります。Flypusherさんが言われているように、misorientationした細胞がボロっと落ちるイメージなのでdelaminationで良かったのかなと、今となっては思います。
    Luminal mitosis論文(http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/24183650)でもapical側にニュルって抜けるmitotic cellのbehavior をdelaminationて表現していることから、細胞自律的そうな場合はdelaminationの方がしっくりくるのかもしれませんね。

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    1. おぉ、やっぱりそうなんや。いやでも確かにちょっと考えてみると、extrusion と delamination の違いは結構重要やよね。全く別の現象を見ている可能性がある。私は基本的にcell competitionが起こっていることを考えながら見ていたので、迷うことなく「extrusion」と言っていたんですわ。
      luminal mitosisの論文ありがとう。これ知りませんでした。読んでみますわ。

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  2. そうなんすね。おいらは、今回の論文でextrusionとdelaminationを混同して使いまくっています。YN氏と同じレヴューアーにあたったら、「extrusionの証拠だせや、オイ、コラ」って言われそうですね(ブルブル)。ってか、フツーにYN氏のボス(そして、YN氏。。。)にレヴューがまわりそうな気がしなくもない。。。そうすると、「全部、delaminationにかえなさい」っていわれそうだ(やれやれ)。

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    1. そらぁ混同はマズイですなぁ。怒られるでしょう。コメットさんが見ているヤツらも自分で落ちちゃう感じなんですね。
      それにしても、みんな、そんなニュルって出ちゃうヤツのことを一生懸命見てるんですねぇ(笑)。

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  3. ニュルって出ちゃう現象が、本当に、cell-autonomousなのかどうか、っていうのはつきつめて考えると、single cell cloneを作らない限り、よくわからない気がしないですか。まぁ、某MG氏のDPPクローンが全部extrusionされる、という昔のサイエンスの論文は、いかにもextrusionっぽいけれど。でも、DPPの場合も、これが本当にbeing pushed out なのか、pushing out itselfなのかは、よくわからない気がします。僕も、実は、最近、extrusion or delaminationの違いをちょっと考えていたのですが、考えれば考えるほど、よくわからなくなってきました。Being pushed out なのか、Pushing out なのか。。ただ単純に、主語をどちらにとるかくらいの違いしかない気もします。人間が地球にたっているのか、地球が人間を支えているのか、みたいな。

    今度、にゅるっと現象についてぜひ3人でディスカッションしたいですねー。

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  4. まぁ確かに、どちらかはっきりしない場合は主語によってどちらとも言えると言えなくもないんですけど。。。でもやっぱり、自律的なニュルをdelamination、受動的な非自律的ニュルをextrusionと規定するのであれば、やっぱりこの違いは大きいですよ。といっても、上にも書いたように、homogeneousな状況とか発生過程での一見自律的に見えるニュルもsurrounding cellsがなんらかの形で促している可能性もあると思うんですよね。組織内にある以上、neighborsとの何らかのinteractionがある訳で、そう考えると完全自律的ニュルはないのかも、とか。結局どっちでいくべきなんかなぁ。。。
    まぁまた来年の春にシカゴで、三人でニュルについてのデスカッションしましょう(笑)。

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