2011年11月23日水曜日

BrdUとEdU

皆さんはS phaseの検出にBrdUを使っていますか?まぁ、もちろん細胞を研究している人以外はS phaseの検出なんてしないのは分かっているけど。
先週、以下の論文を読んでいて“EdU”というものを思い出した。というのも最近結構BrdUの代わりにEdUを使っている論文が多いことが気になっていたのだが、実際何が違うのかちゃんと調べたことがなかった。ちなみにこの論文ではどちらも使っているのだが、なぜ実験によって使い分けているのかその説明はない。

Control of Drosophila endocycles by E2F and CRL4[CDT2].  Nature (2011). doi: 10.1038/nature10579. 

簡単にまとめてしまうと、Drosophila salivary glandのendocycleにおいて、gap phaseではE2F1がtranscription factorとしてCycE expressionとS-phase initiationを促し、S phaseではE3 ubiquitin ligase, CRL4[CDT2]がE2F1を分解することによりCycE/Cdk2のactivityは低下する。つまりE2F1がendocycleのmolecular oscillatorとして働いていると。
starved conditionにおいては、salivary glandのendocycle及びcell growthは阻害されるのだが、面白いことにこの時E2F1 proteinのdepletionが起こっており(mRNA levelは変化なし)、またRheb(mTOR activator)のoverexpressionによってこのE2F1 protein levelは回復し、 endocycle及びcell growthの阻害もレスキューされる。つまりE2F1はendocycle progressionとcell growthを結ぶgrowth sensorとしても働いているということである。なるほどなるほど。ちなみにこの論文、Dr. BEとこの仕事かと思ったけどよく見るとDr. CLとかDr. RDとかも共著に入っていて、結構ビッグなコラボですなぁ。

さて、Drosophilaのfollicle cellでBrdU incorporation assayをやると、oogenesis stage 1~6のmitotic  stageと7~10aのendocycle stageではsalivary glandと同じようにBrdU incorporationのoscillating patternが見られる。ところがstage 10bからはこのoscillating patternは消え、全ての細胞の核内に4〜5個のpunctate BrdU incorporation patternが見られるようになる。これはstage 10b以降、follicle cellがいわゆるgene amplification stageに入って、chorion geneのような特定の遺伝子領域だけを増幅するためである。このendocycle/gene amplification (E/A) switchを見るためにはBrdU incorporationが最適な訳だが、どうもfollicleでは時々BrdUの検出が上手くいかないことがあるんですね。stage 10aまでのoscillating patternはたいがい大丈夫なんだけども、gene amplification stageでのpunctate signalがクリアーでないことがある。ちなみに原因は不明なことが多い。それで、じゃあEdUってどうなんだろうということですわ。
以下、invitrogenのClick-iT® EdU Imaging Kitsの説明書より抜粋。

EdU(5-エチニル-2'-デオキシウリジン)はチミジンのヌクレオシド類似体であり、活発なDNA合成の間にDNAに取り込まれます。検出は、クリック反応(アジドとアルキンの間の銅触媒共有結合の反応)を用います。このアプリケーションでは、EdUにアルキンが含まれ、Alexa Fluor®色素にアジドが含まれています。
BrdUプロトコールにおける変性ステップは、核酸の対比染色に影響するような二本鎖DNAの完全性を失わせるだけでなく、細胞の形態および抗原認識部位を破壊することがありました。対照的に、EdU assayキットは使用が容易なだけでなく、細胞周期分析用の色素などのDNAの染色にも完全に適応します。また、このEdU assayキットは、抗体を使った細胞表面および細胞内マーカーの検出と組み合わせてマルチプレックス化することも可能です。最後に、(非特異的結合を示すことのある抗体に依存する)BrdU assayとは違って、Click-iT® EdU assayはバイオオルソゴナルな(生物学的にユニークである)部分を利用するため、低バックグラウンドおよび高検出感度をもたらします。

ということで、BrdUの代わりにEdUを使う上で、メリットはたくさんあるけどデメリットはなさそうかな?
これは試してみよう。これで毎回ちゃあんとfollicleでのoscillating patternとpunctate signalがキレイに検出できるならBrdUはもうやめやな。

4 件のコメント:

  1. 僕も最近、”増殖”を示すのに、BrdUか何か使おうか、と思っていたので、この記事は、すごいタイムリーで助かりました!僕自身は、BrdUは使ったことないのですが、ラボメンバー数人が、BrdUは染まり方にムラがあっていけていない、といつも言っているので、BrdUは使いたくないな、と思っていました。EdU試してみようかな。

    魚では、よくphospho-histone H3がmitotic cellsを染めるのに使われているので、それを使おうかな、と思っていました。僕の場合、増殖を見たいだけなので、S期でもM期でも基本どっちでもいいので。S期特異的なことを見るのには、適さないと思いますが。ちなみに、IHさんもハエでphospho-H3を使っていました(http://www.genetics.org/content/early/2011/09/13/genetics.111.132993.full.pdf)。

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  2. syoo4sさん、コメントありがとうございます。なぜか頂いたコメントが自動的にスパムフォルダに入れられていたようで、気付いていませんでした。すんません。
    そうですね、anti-PH3はうちでも普通に使っていて、これは大体どの組織でも非常にクリアーなシグナルが得られますね。ちなみにうちはBD Biosciencesのヤツだったと思います。

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  3. 来週、EdUとanti-PH3両方やってみます!

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  4. 私は先週結構慎重にBrdUやって、それなりにシグナルが得られましたが、やっぱり今回も全てのサンプルで完璧にクリアーなシグナルを得ることは出来ませんでした。まぁ、この記事でも書いたように普通のS期の検出には問題ないのですが、核内の特定のゲノム領域だけのamplification patternとなると結構難しいんですね。たぶんDNase処理に微妙な問題があるんだと思います。この点、EdUはDNase処理を必要としないので期待できるのかも知れません。私もEdU試してみますわ。

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