2012年11月20日火曜日

I am thankful for.....

今週木曜日はサンクスギビング。ということで、ロウチビの学校では七面鳥の絵に「I am thankful for.....」という作文をする授業があったようだ。持って帰ってきたその作文を見てみると、「I am thankful for mom and dad.」「I am thankful for the food that comes from the farm.」と、なかなか上出来である。しかし、もう一つ「I am thankful for god's creation.」というのがあった。つまり「神の創造に感謝します」と。ふーむ、なんでこんなアメリカ人みたいなこと書いたんかなと思って聞いてみると、この作文をする前に何やらビデオを見せられて、その中で「人間を含め全てのものは神様が創造されたものだから、We should be thankful for god's creation。」という風に教えてもらったんだそうな。まぁまだ小学一年生やからね、神様に感謝しましょうね、で良いと思う。
しかし、御存知の方も多いかと思うけど、アメリカでは進化論を信じていない人の割合がかなり多い。もちろんキリスト教の教義上の理由からである。例えば以下のグラフはGallupによるデータで、アメリカ人への「人間の起源」に関するアンケート結果。一番上の黄緑色のラインが「人間は神が創ったものである」と信じている人の割合。その下の濃い緑が「人間は長い歴史の中で形を変えてきたけどそれは神によって導かれたものである」と信じる割合。で、一番下のラインが「人間は進化の結果出てきたものであり神は関わっていない」と信じる割合。
驚くべきことに、なんとアメリカでは2012年現在においても実に約8割の人が、人間は神によって創られたものであると信じ込んでいるのだ。日本では生物の進化なんて「エジソンは偉い人」とか「キヨスクは駅の中」とかよりも一般性のある常識だと思うけど、つまりアメリカでは「人間はサルから進化した」とか「生物はみな単細胞生物から進化した」なんてことを言うと、オーノーアタマダイジョーブデースカ?と思われる可能性が高いということだ。
では、国別の割合を見てみよう。以下の統計は2008年のデータで(Wikipedia, Level of support for evolutionより)、アメリカは右から二番目。日本は左から五番目。このデータでは進化を認めるアメリカ人の割合が4割ほどになっているけど、これは上のデータで「神に導かれた進化」を信じる人もいくらか含まれているからだろう。
それにしても、なんでこの科学先進国であるアメリカがこんなことになるのか。。。以前に一度、エボデボの巨匠、キャロル師匠と話す機会があったのだが、その時にこのことについて尋ねてみるとあのキャロル師匠が苦々しい顔で「もちろんキリスト教の影響だけども、アメリカでの教育の現状は本当にヒドイ。」とおっしゃられたことを思い出す。
実はロウチビには以前に「生物というのは、始め一つの小さな細胞として生まれた生命が長い長い時間をかけて今ある色んな形の生き物に変化してきたんだよ。これを“Evolution”といいます。」と教えたことがあった。昨日それをもう一度教えてあげると、「分かってるよ。だってパパが前に教えてくれたよね。」と言う。でもやっぱり幼い子供は学校で先生が間違えたことを教えるとは思ってもいないんだろう。こういうのを見ていると、上の約8割という驚くべき数字が信じられないものではなくなってくるのだ。

7 件のコメント:

  1. でもきっと、アメリカにおける良心とか、寄付の精神とか、道徳心とか、そういうところの根っこは宗教で賄われているので、宗教がないと国が崩壊するぜってな感じなのだろうと想像するんですが、アメリカに住んでみて、どうですか?

    言い方は良くないかもしれないけれど、高学歴であるホワイトカラーの人達は誰もそんなことは信じていないわけで、建前と真実を使い分けているんじゃないのかなぁ。。。

    でもなぁ、ID説とか本気で言い出しちゃうからなぁ。スパゲッティモンスターで抵抗するしかありませんがな。

    返信削除
  2. >でもきっと、アメリカにおける良心とか、寄付の精神とか、道徳心とか、そういうところの根っこは宗教で賄われているので、宗教がないと国が崩壊するぜってな感じなのだろうと想像するんですが、アメリカに住んでみて、どうですか?


    うん、これはまぁ確かにそうだと思う。でもね、不思議なのは、こういうデータから見るとアメリカ人はキリスト教国である先進国の中でも特別信心深いよね。だからといって他の国の方が道徳心が低いなんてことはない訳ですよ。逆にアメリカ人の道徳心が特別高いようにも決して見えないし。だからアメリカ人がヨーロッパのキリスト教国の人達よりももっとキリスト教にすがる何か理由があるんですね。こういう関係の事について特別何か本を読んで研究した訳でもないので、以下は私が長いことアメリカに暮らして肌で感じたことを元にした私なりの考察です。
    一言で言ってしまうと、アメリカ人はキリスト教に帰属意識を持っているのではなかろうかと思う。
    アメリカってまだ歴史が浅くて、元々は色んな国から集まってきた人種の寄せ集めみたいな国ですよね。自分の何代か上の人達がヨーロッパからアメリカに移ってきた。黒人であればアフリカから連れてこられた、とかね。だから、自分はアメリカ人なんだけど、本当は一体自分は何者なんだろうか?と。
    日本ってほぼ単一民族の島国ですごく歴史のある国ですよね。たぶん日本のような国では、その歴史ある文化の中でみんなと同じ日本人として育つだけで自分が帰属する日本人としての確固たるアイデンティティが自然に形成されるんだと思う。ヨーロッパにある歴史が古い国々にもたぶん似たようなものがあるんじゃないのかなぁ。ところがアメリカにはそれがないんですね。きっとアイデンティティを求めているんじゃないのかな。だからアメリカ人としてみんなが共有できる帰属意識は神への信仰心と国家への愛国心しかないんじゃないかと思う。つまり、そういう特殊な建国事情がアメリカ人の考え方につながっているんだろうなぁと思うのです。見た事あるかも知れないけど、アメリカの硬貨や紙幣には「In God We Trust」というモットーが書かれています。この言葉がこういうことを非常によく表していると思うんですよねぇ。

    返信削除
    返信
    1. なるほど、アイデンティティかー。日本から見ていると、愛国心=アイデンティティみたいに見えるんだけれども、キリスト教の信仰心そのものがアイデンティティになってるんですねぇ。そう考えると、「ブッシュの戦争」とかも、なんとなく理解できちゃうかも。

      でもさ、一方で他民族を受け入れる下地みたいなのは(島国の日本と比べるのもあれだけど)相当にしっかりしているよねぇ。他の宗教へのリスペクトみたいなのは、実際どんな感じなの?南部とか北部とか、地域によって違いそうではあるけれど。

      削除
    2. 他宗教へのリスペクト、他の国と比べてどうなんやろねぇ。確かに最近のフランスなんかの事例を見ていると、アメリカはやっぱり本当に色んな国の人達がいるから寛容な方なのかなと思うけど、やっぱり911以降イスラム教への偏見は増えたんやろね。他のマイナーな宗教への理解というのはよく分からんなぁ。だって自分が特別な宗教を持っている訳じゃないからねぇ。でも明らかに差別心はあるよね。これは宗教というより人種という点でだけど。特にワスプの方々にレイシストが多いように見えるかな。そう言う点では人種構成が地域によって随分違うから地域差というのももちろんある。例えば自分は始めニューハンプシャーの田舎に住んでいたけど、あの辺りはほぼ100%白人の世界だった。ところが今いる町なんかは人種の多様性がすごいから、始めここに引っ越してきた時、違う国かっていうくらいの印象を受けたよ。でも人種差別ということに関してはここの方が大きいように感じる。ニューハンプシャーなんてほぼ100%白人だから差別も何もその対象がないという感じなのかもね。

      削除
  3. >言い方は良くないかもしれないけれど、高学歴であるホワイトカラーの人達は誰もそんなことは信じていないわけで、建前と真実を使い分けているんじゃないのかなぁ。。。

    そう。つまりこれは経済格差=教育格差に起因するものであろうと、私もそう信じたいです。しかしながら、現実はそうではないようなんですね。上で取り上げたGallupのデータに教育レベル別のデータがあるんだけど、高卒と大卒でほとんどパーセンテージが変わっていない。そして、大学院卒でようやく約3割の人だけが「進化に神は関係ない」と言っている現実。。。たぶんこの3割のほとんどが理系の大学院卒なのかな。
    そしてこれは意外かも知れないけど、アメリカで特に信心深いのは低学歴の貧困層と高学歴の富裕層なんだなと私の目には映っています。日曜日の朝に着飾って家族で教会に出かけているのはたいがい貧困層の黒人家族か富裕層の白人家族、所謂ワスプのように見えます。もちろんこの二つの層が行く教会は地区が違うので完全に別れているけどね。一般的に貧困層が宗教にすがるのは理解しやすいけど、富裕層のワスプが信心深いのはどういう訳なんだろう。これまた私なりの考察だけども、これはたぶんキリスト教への帰属意識というものが彼らにとってワスプとしての一種のステイタスみたいなものなんじゃないのかなぁと思う。彼らを見ていると、自分の家族がこの経済的格差社会における勝ち組としての富裕層になんとしてでもしがみついていなければならないという悲壮な決意とか危機感みたいなものが感じられるのよね。だからこそ神にもすがりたくなるのかも知れないけど、どちらかと言うと彼らはそういう層が集まる教会へ帰属する事によって自分達の富裕層としてのアイデンティティを確認している様にも見えるかな。

    返信削除
  4. >大学院卒でようやく約3割の人だけが「進化に神は関係ない」と言っている現実

    これだけどさ、これこそ高学歴の人達が「たてまえ」と「本音」を使い分けている証拠じゃないかと。アンケートはたてまえの方で書くってことはない?

    高学歴のアメリカ人は「信心深く振る舞うこと」が大事だと思っているんじゃないかなぁ?心の中では進化を信じているけれど、人生においては宗教を信じている。で、対外的にどちらをとるかというと、人生における帰依を当然ながら選んでいる。なーんて疑いすぎかなぁ?

    返信削除
    返信
    1. いやまぁそういう人も多いかも知れんね。自分もそれほどたくさんのアメリカ人とこういうことを議論した訳ではないからなんとも言えんけど、自分の経験の中ではやっぱり大学卒でも進化論は認めていても聖書にある神の存在自体は完全に信じている人がかなり多いと思うよ。でもこのあたり、宗教に関してあんまりつっこんだ議論をするのはメンドクサイしナイスじゃないからあんまりしたくないっていうのもあるね。それこそ文化の違いをリスペクトしなきゃいかんということですな。まぁ進化という概念自体は文化ではないけど。

      削除