2010年7月26日月曜日

TAHs

金曜日のラボミーティングは自分が面倒を見ている子供達二人の発表の番だったのだが、手元にある大量のコンフォーカル写真をFigureにするのが面倒くさかったので、ニッキーには主に今やっているスクリーニングの説明、そしてギルスには論文紹介をしてもらった。ギルスに紹介させた論文は“Flower”の論文とともにDevelopmental Cellに出てきたもので、去年9月のバルセロナでDr. MVが発表していた内容。バルセロナで聞いた時もオモシロイナーと思ったのだが、やっぱりなかなか楽しい論文になった。内容を簡単にメモしておく。

scrib、dlg、lglといったneoplastic tumor suppressor geneのmutant cloneではEiger (Drosophila TNF homolog) によるJNK pathway activationがcell deathを引き起こすのに対し、これらのmutant cloneでoncogenic Ras (RasV12) を発現させた場合、このEiger-JNK pathwayのactivationがtumor growthとmetastatic behaviorを促すことが知られている。つまりtumor cellにおいて、TNFは“protumor”と“antitumor”としての相反する役割を持っていることになる。この論文でもegr-/- backgroundではdlg-IR cloneにおけるapoptosis、そしてcollagenase activity、delamination、ECM remodeling、invasionといったphenotypeが抑えられることが示されている。一方で彼らはRasV12; scrib-/-のtumor cellが誘導されたdiscにおいて、そのtumor cellに囲まれたWT cellがEigerを強く発現していることを発見した。しかもこのEiger expressing WT cellはhemocyteであることがanti-Nimrod C1抗体によって確認された。このことから彼らは、tumorにリクルートされたこのTumor-Associated Hemocytes (TAHs) がEigerを発現し、これがtumor cellでのJNK activationのトリガーになっているのではないかという仮説を持った。これを証明するためのhemolymph tranfusion assayが非常に面白い。まずhemocyteにRFPを発現させた個体 (he>RFP) のhemolymphをRasV12; scrib-/- cloneを誘導した個体に注入したところ、多くのRFP-labeled hemocyteがtumor cellにリクルートされていることが確認された。さらにegr+/+個体のRFP-labeled hemocyteをegr-/-; scrib-/-の個体、もしくはegr-/- backgroundにRasV12; scrib-/- cloneを誘導した個体に注入した場合、これらのegr-/- backgroundのscrib-/- cellでは抑えられていたはずのMMP1の発現がRFP-labeled TAHsがひっついた近傍では亢進されていた。またhe>egr-IRによってlgl-/- cloneのeliminationが抑えられることも確認している。つまり、tumor tissueにリクルートされたhemocyteによって引き起こされるTNF signalingがtumor cellでのJNK activation、cell deathのトリガーになっているのだが、oncogenic Rasを発現したtumor cellはこのinnate immune systemによるtumor suppressor functionをハイジャックしてinvasive growthに利用してしまうのであろう、という結論。
basement membrane disruptionが起こったtumor cellにhemocyteがひっついてtumor growthを抑えようとしていることは、2008年のDr. TX labからの論文で既に報告されていることだが、このhemocyteがEigerを発現していてこれがtumor cellのJNK activationを引き起こしているというのは非常にオモシロイ。

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